管理人と名乗る女性
「！」
飛び起きると、見慣れた自分の部屋だった。なぜかジャージ姿になっている。
「夢……だったのか？」
でも、あまりにもリアルすぎた。血の匂いも、恐怖も、すべてが現実のように感じられた。
電波時計を見ると6時45分。まだ早いが、もう眠れそうにない。
カーテンを開けた瞬間、心臓が止まりそうになった。
そこには、夢で見たのと同じ赤い球体が浮かんでいた。
「嘘だろ……」
慌てて一階のリビングに向かった。
そこには誰もいなかった。いつもなら新聞を読む父、朝食を作る母、朝練で早起きする姉がいるはずなのに、まるで最初から存在していなかったかのように。
「これは夢だ。絶対に夢だ」
自分に言い聞かせながら洗面所に向かった。
扉を開けようとすると、中からシャワーの音が聞こえてきた。
「誰か……いる？」
完全に扉を開けたとき、シャワーの音が止まった。浴室の扉が開き、濡れた長い髪の女性が現れた。
「うわあああ！」
「あ、君、やっと起きたんだ」
女性は全裸なのに、まったく恥ずかしがる様子がない。
「前を隠せ！」
近くにあったタオルを投げつけて、大急ぎでその場を離れた。
数分後、女性は動きやすそうなジャージ姿で現れた。
「で、お前は一体何者だ？」
「萃香。この世界の管理人よ」
萃香と名乗った女性は、どこか人間離れした雰囲気を持っていた。肌は透き通るように白く、瞳は深い青色をしている。そして何より、その存在感が薄い。まるで半透明の存在のように。
「管理人って何の？」
「この世界全体の。正確に言うと、この世界は仮想ネットワーク空間。現実世界をベースにしたシミュレーション世界よ」
「仮想世界？」
「そう。君は昨日、学校で意識を失った。その時、何らかの原因でこの世界に取り込まれた。私は異常を検知して調査に来たの」
萃香は僕の腕を掴み、ベランダに向かった。
「あの赤い球体、見えるでしょ？あれがこの世界の中央処理装置。あそこに行けば元の世界に帰れる」
「じゃあ、すぐに……」
「問題があるの。この世界には防衛システムがある。侵入者を排除するためのモンスターが出現する」
萃香の表情が急に真剣になった。
「なぜ君がここに来たのか、その理由を探る必要がある。普通の人間がこの世界に入ることはできない。誰かが意図的に君を招き入れたのよ」
「誰が？」
「会えば分かると思う。とにかく、中央処理装置まで行きましょう」
萃香は僕の腕を掴み、二階の窓から飛び降りた。
「うわああああ！」
