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赤い月の向こう側  作者: 西葫芦《Rz》
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秘密

「あなたはこの世界の秘密を知ってる?」

憧れの桜井美月から声をかけられたのは、三か月ぶりだった。彼女は文芸部の部長で、いつも図書室で本を読んでいる。僕は彼女の透明感のある美しさと、時折見せる少し寂しげな表情に惹かれていた。

「この世界の秘密って?」

そう聞き返したが、彼女は僕の言葉がまったく聞こえていないかのように、そのまま廊下の向こうに消えていった。

「秘密か……」

放課後、教室で一人になっても彼女の言葉が頭から離れない。いつもなら何でもない一言なのに、今日の美月は何かが違った。まるで本当に重要な秘密を抱えているような、切羽詰まった表情をしていた。

「田中、なんか悩みでもあるのか?」

隣の席の佐藤が心配そうに声をかけてきた。

「いや、別に何も」

佐藤は悪い奴じゃないが、こんな複雑な話をしても理解してもらえないだろう。僕は自分だけの居場所である屋上に向かった。

扉を開けると、放課後の屋上には冬の柔らかな陽光が降り注いでいた。普段なら心が落ち着く場所なのに、今日はその光さえも眩しすぎて苦痛だった。

「はぁ……」

美月はなぜあんなことを言ったのだろう。そして、なぜ僕の返事を聞かずに去ったのか。考えても考えても答えは見つからない。

気がつくと日は落ち、暗闇に包まれた空に冷たい風が吹いていた。

「校舎内にいる生徒は、作業を中止して急いで帰宅してください」

完全下校時刻を告げる放送が響く。もうこんな時間か。

僕は二階の廊下を歩いていた。しかし、いつもなら三分もかからず一階に降りられるはずなのに、階段が見当たらない。

「おかしいな……」

近くのクラス板を確認する。「2-8」と書かれている。さらに歩いて再び見ると、また「2-8」だった。

「なんで?」

心臓の鼓動が早くなる。冷静に考えろ。きっと見間違いだ。

そのとき、廊下全体を照らす不気味な赤い光に気がついた。

窓の外を見上げると、空に巨大な赤い球体が浮かんでいる。月ではない。月よりもずっと大きく、緋色に近い赤で周囲を染めている。

「何だ、これは……」

窓を開けようとしたが、まるで空間が凍りついたように動かない。そして今更になって、校舎に人の気配がまったくないことに気づいた。

足元に何かが流れてきた。

「!」

深紅の液体が靴を覆い、鉄のような匂いが鼻を突く。血だ。

震える足で血の流れを辿ると、廊下の向こうに五つの物体が散らばっていた。

恐る恐る近づくと、それは人間の死体だった。腕、足、頭、胴体がばらばらに切断されている。制服から、この学校の女子生徒だと分かった。

「うっ……」

胃の中身が一気に込み上げてくる。

必死に逃げようとしたが、突然激しいめまいに襲われた。膝が崩れ、血まみれの廊下に倒れ込む。

意識が薄れていく中、最後に見えたのは赤い月の光だった。

二作品目の投稿です。今回は連載をしていきたいと思います。良ければ、感想もお願いします‼

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