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チャイティーと、甘さと、  作者: 夏目鈴湖
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珠子とアイデンティティー

幼い頃から珠子は、絵を描くことが好きだった。幼い頃の珠子は、自分のアイデンティティーはやはり絵であると思っていた。


小さい頃から可愛い女の子を描きたくて、少女漫画の絵を真似して描いたり、漫画を作ってみたりしていた。絵は上手いと思っていた。小学生の頃、遠足のしおりの表紙の募集に応募したことがあった。珠子はどんな物が表紙に好まれるか理解していたので、その思考と相まって、珠子の描いた絵は表紙に選ばれたのだった。この時から、絵が上手いことが珠子の密かな自信になっていった。


中学には自分より上手い人は沢山いた。

でも珠子はまだめげない。イラストが駄目なら、美術で頑張れば良いと思った。珠子は、ほぼ全ての学期で、美術でAを取った。珠子の作品は良く展示されたし、珠子も自信に溢れていた。


高校生になってから、ちょっとずつ環境が変わっていくのを感じた。絵が上手い子は、オーラとか、雰囲気があって、そういう子に皆はポスターなど絵を依頼するようになったのである。珠子は目立たない子だった。依頼されることはあまりなかった。自分が必要とされていない感じがして、とても嫌だった。


珠子に立ち直るきっかけを与えたのは、文化祭直後のとある授業でのことだった。


「俺、あれに感動したんだよー、あの赤外線のやつ!すげーなーって思ったよ!」


珠子のクラスでは、文化祭で怪盗物をやろうという話に決まった。何のゲームを入れるかの話し合いで、珠子は委員の子に赤外線を潜るゲームを入れたいと、勇気を出して発言した。結局ゲームではなく、ゲームの間の繋ぎ要因の飾りとして採用されたのだが、まさかピンポイントで褒められるとは珠子は夢にも思っていなかった。



あんまりにも嬉しくて、心の中でガッツポーズを何度もした。



その頃からだろうか、物を作る仕事に就きたいと思ったのは。物を作って、人にその物を愛して貰いたかった。なぜなら、私の一部も愛して貰えるから。



珠子は、イラストや絵などの平面ではなく、立体の物の方が自分の考えを実現しやすいのではと考えた。後、イラストや絵はもう叶わないと諦めの気持ちもあった。出来れば、デザイン系の立体の科に入りたかった。


そうして、美大受験を始めたわけだが、珠子はデザイン系の立体は落ちて、ファイン系の立体に合格し、今珠子はそこの2年生となったのであった。




珠子は今日も皆に愛される作品を考える。


自分の存在を確かめる為に、必要として貰えるように。


アイデンティティーは、まだ模索中。



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