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チャイティーと、甘さと、  作者: 夏目鈴湖
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珠子とファイン

 珠子は美大生だ。でも、"美大生っぽさ"は全く感じられなかった。珠子もそう思ってた。でも、美術が好きで、結局美大に入ってしまったのだった。


 誰かに愛して貰いたいから、この気持ちが彼女の美大行きを後押ししたのだった。


 珠子は美術が優れていたのか。実はそうでもなかった。試験科目のデッサンは特段優れているとは言えなかった。予備校の先生にも入るのは難しいと言われた。だから、言うなればちょっとした奇跡であったのだ。


 珠子はオシャレな雑貨が好きだった。誰かの芸術作品よりかは、気の利いたデザインの方が好きだったし、自分でも考えるのが好きだった。


 自分の考えどうこうより、他の人に合わせたものを作る方が向いていると思った。それは珠子が珠子自身を肯定しきれないが故なのか。珠子は自分を肯定するには誰かからの愛が必要だと、幼少期から今まで、ずっと感じていた。



しかし、珠子が今いる科は、デザイン系ではなくファイン系だった。


ファイン系とデザイン系。主観と客観。作品を作る行為自体は同じでも、作る視点は違う。デザイン系は、人のニーズに合わせて作品を作る、いわゆる珠子が向いていると思った方面であった。ファイン系は、自分の考えとか何かの題材を、作品という形で表現することである。珠子は表現はしたくても、自分の考えはとても薄っぺらいと考えてたので、向いていないと思っていた。


「君は何を表現したかったのかね」

教授の1人が、紫縁の眼鏡を押し上げながら私の方を見た。

「自分の作ったものの相対性はどんなのか知りたくて作りました。モデルはあるんですけど、私の技術じゃちょっと…と思ったので、少し自分なりに変えてみました」

「君はひねくれているね」

「自覚はしています」


結局、面白かったという形で私の講評は終えられた。味があるというのは、愛される為に大切な要素だと思う。何も感想が無いのは、つまらない、愛されない。


興味を持って貰うのは、愛されるきっかけではなかろうか。


とりあえず、今日はチャイティーでも買って帰ろう。珠子は小さく伸びをした。


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