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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

アンフェアな街で

作者: 琴内光乃
掲載日:2014/11/06

※この物語はアンフェアなので保証はいたしません。

 粉雪が舞う街角で、その男は女を待っていた。寒さで体が冷えきっていて、今にも凍え死にそうだ。

 道行く人々はその男を避けて通る。何せ傷だらけで真夏の格好をして小汚かったからだ。

 彼は、園島雅人(そのじままさと)。年齢は三十二歳で、まだ無職で住所不定の浮浪者である。

 この街、弧都ことのルールはアンフェアだ。

 だからみんな好き勝手やっている。

 強盗、強姦、売春、力と金が全て、アンフェアこそがこの町で生き抜く術だ。

 ネオンは明るいもののどことなしか弧都はどんよりとした暗い街並みだった。

警察? ハッ、そんなもの金で買収すれば見逃してくれる。

 ただしこの街を支配する独裁者の怒りに触れれば、そいつは殺害される恐ろしい処罰はあるのだが。

 だが、雅人だけは違っていた。

雅人は今日この町に来てアンフェアというルールを知らない。

 真夏のような恰好をしているのは数分前に身ぐるみをはがされて、金を奪われてしまったからだ。

 待ち合わせをしていた女は二時間ぐらいの遅刻でようやく姿を現した。もはや遅刻では許されないが、この弧都では通用する。

 何もかもがアンフェアな街。

 雅人は元々インチキ勝負師で、数ヶ月前その女にバクチのズル腕を見込まれて弧都に来たのだ。

「遅いじゃないか」雅人は待ち合わせの時間が、とっくに過ぎていることに腹を立てた。

「あなた、この町のルールはアンフェアよ。時間なんてみんなが破るわよ」顔を上げてプイっとソッポを向きお高くとまったその女の名は、サンタナ・ミストレス。年齢不詳でこの町を支配する女帝。

「なんで二時間も遅れたんだ?」雅人は遅刻の理由をサンタナに訊くととんでもない返答が帰ってきた。

「セックスよ。今までセックスをしていたの」何の恥じらいもなく髪を整えながら平然と語るサンタナに、雅人はまともじゃないと感じた。

 彼女はその美貌を武器に、男たちを誘惑して体を売って金をつぎ込み、この町の独裁者となった。

 ほかの女たちは、彼女ほどの美貌や性の魅力はなく、普通に体を売るだけではサンタナには勝てない。

 サンタナとセックスをした男たちは何らかの形で死んでいるのだが一切は不明だ。いやサンタナの組織の者たちが何らかの形で、その人物を殺害して隠ぺいをしているのだろう。

 サンタナは雅人をリムジンに乗せるとセクシーなランジェリーをわざとスカートからチラつかせる。

「お前……ワザとパンツ見せんなよ」雅人はサンタナの誘惑には乗らず話を切り出す。

「この町はアンフェアがルールって言ったよな。どこまで狂ってる?」雅人はそう言うと、サンタナの足を軽く蹴る。

「狂ってる? フフ、この街はそうかもしれないわね」サンタナはその質問には答えずに蹴り返す。

 サンタナはホテルに車を向かわせた。そこで完全に雅人を自分の虜にするつもりでいた。

「先にシャワー浴びてくるわ」サンタナがバスルームに向かおうとしたとき、雅人はサンタナのバッグを棚から持ち出して逃走しようとした。

「本当にあなたはずる賢いのね」その言葉にふと後ろを振り向くと、サンタナはピストルを構えていた。

「俺の負けだよ」おとなしくサンタナのいうことを聞くことになった雅人は、サンタナとの性行為に及んだ。

「最高の気分だぜ。つまりはあんたに頭下げてれば殺されないんだな?」タバコを吸いながら、雅人は余韻にひたる。

「そうよ、私の新しいペットちゃん」雅人のあごを撫でながらキスをする。

 ホテルを出たあとで豪邸へと招かれる雅人は、その豪華さに圧倒される。

 昨日までは貧乏なインチキ勝負師だったのに今はうって変わって、女主人のゆうことさえ聞いていれば三食飯付きでしかも性欲も満たされる。

 男にはこのうえない幸福だ。

 夕食の時間テーブルにつくとなんとも豪華な食事が運び込まれる。

「遠慮しないでどんどん食べて」サンタナが手を叩くとメイドが高級なワインを持ってきて雅人のグラスに注ぐ。

「あ〜、美味い」雅人はそれを飲み干しこの上ない幸福感で胸いっぱいになる。

食後、メイドにバスルームへ案内されると、そこにはサンタナが待っていた。

「体の隅々まで洗ってほしいの。頼めるかしら?」このぐらいの命令ならばと喜んで背中を流す。

「ところで、明日人を殺してほしいの。頼める?」サンタナの言葉に雅人はためらいもなく笑いながら引き受けることにした。もはや雅人はサンタナの魅力に取りつかれて人格が破綻寸前だった。

 サンタナはこうして男たちを性の虜にして、ペットにし自分を脅かす人間を殺害しているのである。

 そして用済みになったペットは、また新たなペットに殺害させる。

 もう一度言おうこの街、弧都はアンフェアがルールだと……。

 翌日になり雅人は約束の時間に殺害を決行する。ターゲットはサンタナに捨てられた前のペット。

 そこにはサンタナの姿もあった。

 サンタナはこれでもかとその男に暴行を加える。そして飽きたころで雅人に殺害の命令をくだす。

「かわいそうに……なんで、お前はルールを無視した?」雅人はそのターゲットを同情する。

「見逃してくれ。俺は人を殺せなかったんだ」涙を流し命乞いをする男をよそに雅人は引き金を引いた。

 バーンと銃声が聞こえた町のど真ん中、通行人は一瞬だけ足を止めたが見て見ぬふりをした。

「なんで、私を撃つの?」サンタナは胸から血を流していた。

「アンフェアならお前を殺すのもありだよな?」雅人は弧都のルールで独裁者を殺害したのだ。それが許される街。

 サンタナを殺害した雅人は弧都の新しいドンになり、そして新しいルールを設けた。

 それはアンフェアを許さないフェアな街づくり。

 一ヶ月後、街はフェアに基づき治安もよくなって、活気にあふれかえりどことなく明るくなった。

 革命をおこした雅人は弧都の住人に讃えられて都長になることを進められるが、自分はガラじゃないと人を殺せなかった男にその座を譲ることにした。

 そして雅人は弧都を出ていき、自分の故郷でインチキ勝負師に戻っていた。

 弧都の英雄は違う町でアンフェアを繰り返す。それが雅人のフェアな生き方なのかもしれない。

読了感謝!!

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