06 彼の求めるもの
キースが監督をして、彼の仲間が演出や美術を組んで、アイルがヒロインをして、ヤンは主役の劇は大好評だった。
ちなみに僕はヤンの仲間の騎士の役だった。
キースがヤンの独特な雰囲気を気に入って主役に大抜擢。
それがはまり役だったみたいで、評判が広がってカーニバルの2日目には会場には入りきらないくらいのお客さんが入っていた。
僕らの学校は全部で10あるうちの2位。銀賞だった。
キースの劇は大成功したんだけど、他のチームの出し物を含めた学校全体で争うから総合力では優勝校に一歩及ばなかったみたいだった。
そのおかげで、今まで近寄りがたい雰囲気を放っていたヤンはミステリアスな少年として女の子に大人気だった。
だから、カーニバルが終わったあとからヤンに告白する女の子が増えた。
「なんか大人気ね。ヤン。女の子選び放題じゃない。」
「おいおい、勘弁してくれよアイル。こっちは迷惑してるっつーの。この前なんか家の前まで来られて焦ったぜ。」
「いいなー、僕も人生で一度でいいからそれだけモテてみたいよ。」
「そう思うなら代わってくれよ、俺は追い掛け回されるのはもう疲れた。」
そんな下らないことを話しながら3人で帰っていると、僕らの前に金色の髪の女の子が現れた。
いかにも女の子という雰囲気の小柄な可愛らしい子だった。
「あの…、すみません…ちょっといいですか。」
その子のちょっと恥ずかしそうで不安そうな話し方から状況を察した僕はアイルと二人で先に帰ることにした。
「ヤン、終わったらマッシュのお菓子屋の前で待ってるわね。いこう、リロイ。」
ため息をついて呆れたようにアイルが言った。
そうすると彼女はすたすたと歩いていった。
アイルがため息をついたのは、きっとヤンの近くにいるから何人もの女の子にキューピットを頼まれてうんざりしているからだろう。
お人好しな彼女は頼まれれば断れないから、最初は快く受けていたがそれを受けるたびにヤンが不機嫌になるから最近は適当に受け流すことにしているみたいだ。
すたすたと歩いていったアイルを見るヤンは少し焦っているように見えた。