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05 守り方を初めて知った

キースが監督の劇の練習は、思ったとおりハードだった。

アイルのいとこのキースはアイルと同じように昔から優秀だって大人たちに言われていた。

その分周りの期待に応えないといけないプレッシャーを抱えていて影で人一倍努力をしていた。

僕はそんなキースを幼いころから見ていたけれど、彼がものごとに手を抜くところを見たことがなかった。

僕はそんなキースを心から尊敬していて、自分の兄のように慕っていた。

だから、アイルに言われただけじゃなくてキースのためにもこの舞台を成功させたかった。




そのために毎日頑張っていると練習時間が遅くなることが多いので、家が近い僕とアイルとヤンは一緒に帰ることが多かった。



その日は小腹が空いたので、帰り際にアイルとヤンとマッシュのお菓子屋に寄ることにした。

ヘトヘトになっているアイルを店の前のベンチに残して、僕とヤンが店でお菓子を買ってきてベンチで3人で食べることにした。



「やっぱいつ来てもここは天国だよな。」

「ヤンは本当にここのお菓子が好きだよね。」

「そりゃそうさ、小さい時から近所にこんな美味しい店があったお前らが羨ましいぜ。」


そんな他愛もない会話をして買い物を済ませ店を出るとベンチに座っているアイルの周りに誰かがいた。


「おい、リロイ。あいつら誰だよ」

「あぁ、隣の地区の学校の奴らだよ。多分アイルの事が気になってるんだろうね。見かけるたびによく突っかかってくるんだ。」

「へぇ、さすが成績優秀で、可愛らしいお嬢さんは違うね。隣の学校にもファンがいるのか。」

「そうなんだよ、でもアイルの方はちょっと迷惑そうだから助けた方がいいかも。」

「お前呑気すぎるだろ、だったら早く助けに行くぞ。」

「だっていつものことだし、放っておいても手は出してこないしさ。」



余計な争いごとをしたくない僕はアイルの元に走っていくヤンを余所に、見慣れた光景を気だるそうに見ていた。


アイルの元に歩いていくと案の定いたのは、隣町のギルとベータだった。

いつも一緒にいる僕がいないのをいい事にアイルと話せるチャンスだと思ったんだろう。


ニヤニヤする彼ら二人に対してアイルはだるそうに適当に受け答えをしていた。



「おい、アイル。早く帰るぞ。」


ヤンの透き通るような声が響いた。

その声に一瞬彼らは怯んだけど、案の定ヤンに突っかかりだした。


「なんだよ、お前。誰なんだよ。」

「うるさい、お前らに用はない。」


ヤンはギルとベータを無視してアイルの前に立って両手を広げた。


「アイル、来いよ。」


ヤンの意図を理解したのかアイルはにたっと笑ってヤンに飛びついた。


「こういうことだ。だからお前らには用はない。」



目の前で演技とは言えそんな光景見せられてしまった彼らの面目は丸つぶれだった。

さすがヤンだ。僕は彼の友達でいることが誇らしかった。

でも、こんなにストレートにアイルを守ったヤンにちょっとだけ嫉妬していた。

僕も彼みたいになりたいって強く思った。

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