02 君の魔法で僕は笑う
僕はいつものようにアイルと登校していた。
アイルとは家が近所の幼馴染だ。
僕と彼女は魔法学校の前に子供達入る初等学校のころからずっと一緒にいた。毎日一緒に登下校する僕と彼女をからかう子もいたけど、僕もアイルも幸いそんなことは気にしなかった。
毎朝、僕とアイルの家の真ん中にある噴水の広場で待ち合わせて学校へ向かう。それが僕らの日常だ。
「ねぇ、リロイ。今日の歴史のレポートやった?」
「え、歴史って今日だったけ?明日だと思ってたよ。どうしよう。」
「やっぱり忘れたのね。だと思ってレポート用紙持ってきたから、今から急いでやろっか。」
「え、今からやるの?もう減点でいいよ。」
「ダメよ。去年の学年末もそういう減点ポイントが重なって留年しかけたでしょ?今年はなんとしてでも上位で進級するのよ。」
僕よりも僕のことを心配してくれるアイルはとても面倒見がいい。
小さい頃からの腐れ縁なのかもしれないけれど、アイルが自分に構ってくれることが僕は嬉しかった。
レポートをやるために急いで学校に向かい、アイルに急かされながらなんとか僕は歴史のレポートを完成させた。
授業の開始の鐘が鳴ったとき、先生が見慣れない男の子を連れて教室に入ってきた。
黒い髪で青い目をした男の子。黒い髪の人がほとんどいないこの街で、彼は異質な雰囲気を持っていた。でも、彼の目はとても綺麗でじっと見ていれば吸い込まれてしまいそうな不思議なものだった。
「皆さん、今日は転入生を紹介します。第一魔法学校からこの第五魔法学校へと来ることになったヤン君です。皆さん仲良くするように。」
「ヤンです。よろしくお願いします。」
そう冷静に言い放つと彼は自分の席に座ろうとした。そのそっけない様子にクラスの皆は不信感を抱いていたみたいなんだけど、アイルは違った。
「ヤン君、第一魔法学校ではこの学校とどういう風に違うの?私たち、この第五学校のことしか知らないから教えて欲しいわ。」
ヤンはひと呼吸置いたあと、少し面倒そうな顔をして
「人数の規模が違う、あっちは1学年300人くらいいたがこっちは60人くらいしかいない。あとは、あっちは医学や科学といった授業が多かったがこっちは歴史や文学といった文化系の授業が多いな。」
そう言ったヤンに興味を引かれたのか、クラスの生徒たちは「どんな先生がいた?」「制服は?」「カーニバルはどんな感じなの?」とか矢継ぎ早に質問をしていった。
狭い世界で生きてきた僕らにとっては、彼という存在はとても新鮮なものだった。
そんなクラスメイトとヤンのやりとりを見てアイルは嬉しそうに笑っていた。
そんな君の顔を見て僕も笑ってしまった。