5話 これまでの10年→これからの一歩
「2993…」
「2994…」
広大な敷地を持つグランザイル家の庭の一角で一人の少年が剣を振っていた。
「2995…」
剣を振る度に汗が全身から吹き出しすでに汗だくで、息もだんだん荒くなっていくが構わずに振り続ける。
「2996…」
最初に始めたときは今の半分の回数も振ることが出来なかったが毎日、やり続けることによって腕の筋肉もだんだんとついてきたと思うし振り方のコツが分かってくると無駄な体力を使わずに振り続けることが出来るようになった。
「2997…」
1振り一1振りに気持ちを込め前の1振りよりも更に速く、更に重く、更に鋭く貪欲に強さを追い求める。
「2998…」
その姿は素人目に見ても綺麗であり、見る者が見れば素振りからでも垣間見える子供とは思えない、その剣の技量に驚いただろうが、その場には誰もおらずどこからか聞こえる鳥の声だけが響いていた。
「2999…」
(これで最後!)
「3000ッ!」
そうして、最後の素振りを終えるとしばらくそのままの体制で乱れた呼吸を整える。
熱を持った体がだんだんと冷めていき、それと同時に頭の中もスッキリしていく呼吸が整うまでは3分もかからないが、この時間が俺は好きだ。
転生してから更に5年経ち、明日でちょうど10歳になる。
この5年で様々なことがあった、今年で4歳になる妹が産まれたり、獣国の武道大会を見に行って誘拐されかかったり、急にドラゴンが里から出てきて暴走したり、まぁ親父が出れば大抵のことは片付いたが…
「あー!ヴェリル様こんなとこに居たんですかー?メイド長が探してましたよー?」
「セーナさんが?…あ!、そういえば服の調整をするとか言ってましたね忘れてました!」
「もー、ヴェリル様も意外とおっちょこちょいですね」
とリカさんが笑う、五年間いろいろと失敗しながらでもメイドの仕事を頑張っていて、最近はそれなりにドジも減ってきたとセーナさんが少し嬉しそうにこの前話していたがそれでもリカさんだけには言われたくない言葉だ。
「すぐ戻りますね!」
約束を思い出し俺は全速力で部屋まで戻る為に走り出す。
「え?ヴェリル様?ちょっと待って下さい!どうやって帰るかわかんないんですけどー!?」
後ろから凄く不安な声が聞こえてくる…本当にドジは減ってるんだろうか?凄く不安になってきたんですけど。
でもゴメン、リカさん今は戻る方が優先なんだ、服の調整を終えても戻ってこなかったら迎えに行こう。と心に決め俺は急いで部屋まで戻って行った。
話の時の流れが、かなり早いですが大人になるまではかなり飛ばして行こうと思います。
そのうち小話などとして過去の話も書いていこうと思ってはいます。