3話 魔王→家庭の団らん
魔王と言えば人間と敵対しその強大な力と凶悪な僕達を使い人々を虐殺し世界征服を目論む悪の権化の様なイメージがあるが、この世界ではただ魔国の国の王というだけであり、無闇に人を殺すことはおろか非常事態には他の国とも協力して戦う、イメージにある魔王とはかけ離れた存在となっている。
と言っても俺の親父なんだが
「ヴェリル様、そろそろ朝食の時間ですので着替えに参りました」
とドアの向こうから女性の声が聞こえるとドアが開き声の主であるメイド長のセーナが部屋の中に入ってくる。
「もうそんな時間ですか、すぐに着替えましょう」
「起きていらしたのですか?なら、お呼びになって下さればすぐに駆けつけましたのに」
「すみません、少し考え事をしていたので」
「考え事…ですか?何か不安なことでも?」
少し心配そうな顔でセーナが聞いてくる、セーナはグランザイル家に一番長く仕えているメイドであり、現在はメイド長をしている。
といっても姿は下半身が蛇なことを除けば20代の美女であり俺からすると少し不思議な感じではあるが、この世界では魔力を多く持つ者は長命になる傾向があり魔力を多く持つ魔人の中でも更に魔力の多いナーガ種の
彼女は200年、300年生きた程度では寿命が尽きることは無いらしい。もっとも彼女が何年生きているのかは教えてくれそうにも無いが…
「いえ、今日の予定について少し考えていただけです。心配してくださってありがとうございます」
「ヴェリル様のことを心配するのはグランザイル家に仕える者としては当然のことです」
「そうだとしても変わらないですよ、母上達を待たせる訳にも行かないですし早く行きましょう!」
「そうですね、食事が冷めてもお二方に悪いですし」
そう言うとセーナは慣れた手つきでヴェリルを着替えはじめた。
(最初は少しビックリして抵抗もしてみたが、何事もなれだよな自分で着替えるよりも早いし)
などと考えていると着替え終わり
「それでは朝食へ向かうとしましょうヴェリル様」
と言うと二人は食堂へと向かっていった、初代魔王が派手なのを好まなかった為に他の王宮と比べると少し小さいがそれでも十分過ぎる大きさを誇るグランザイル邸、寝室から食堂へと向かうのにも3分ほど歩かないといけず、王宮がいかに広いかが分かる。
食堂に着くと、まだ二人は来ていなかったがしばらくすると
「あら、おはようベル今日は一番みたいね」
と金髪の美女が現れた。もちろん俺の母親であるセディス・グランザイルのことだ。
「おはようベル、少し待たせたみたいだな」
と続いて迫力のある大男が現れる、身長は2mを超えており服越しでもわかる筋骨隆々とした体からは歴戦の戦士を思わせるオーラが漂い、額には魔人の中でも戦闘力が特に高い鬼人の証である角が生えており、その赤く光る眼とあいまって本物の鬼を想像する。
この男こそが第四代グランザイル魔王であるヴァンベルト・グランザイル俺の親父である。
「おはようございます、父上母上。僕も今来たところのなので気にしないで下さい」
ちなみにベルとはヴェリルを短縮した、俺の愛称だ。
「そうか、なら朝食を食べるとしよう」
こうしてグランザイル家の朝が始まる。
魔王ヴァンベルトの姿は赤毛の最強親父と世紀末覇者さんを足したような感じになっています。