第29話:初収穫(失敗)
日の光は、静かに畑に降り注いでいた。
雑草でも、昨日よりははっきり伸びていたような気がする。
気のせいかもしれない。
「……さて」
レオンは、腰を下ろして畑を眺めた。
植えた根や種は、まだ小さな変化しか見せていない。
だが、昨日よりは確実に“育とうとしている感じ”がある。
(まあ、たぶん気のせいだな)
笑いながらそう思う自分に、少し驚きつつ手を伸ばす。
と、そこに――
色の違う葉っぱが、一枚だけ顔を出していた。
「……あれ?」
よく見ると、小さな芽が出ているように見える。
(ついに来たか)
レオンの胸の中に、ぽん、と小さな高揚が湧いた。
よく見れば、いくつかまとまっている。
ここに来て初めての“成果”――
いや、そう思った瞬間だった。
手に取ってみると、葉っぱは妙に固い。
匂ってみると、なんだか青臭い。
(うん、これは……)
一口かじった瞬間、
レオンの顔が曇る。
「……うわっ」
その葉っぱは、苦い。
渋い。
そしておそろしく“食べられない味”だった。
むせ返るような感覚に、思わず笑いがこみ上げる。
「……コレ、食事じゃなくて罰ゲームだろ」
どこからか、ツッコミを入れたくなるほどのまずさだ。
意図せず噴き出した笑い声は、
空気をふわっと軽くした。
芽は確かに出ていた。
だが――
食えるかどうかは、また別の話らしい。
(まあ……最初から、甘くはないよな)
笑いながら葉っぱを吐き捨て、
レオンは改めて空を見上げた。
成果は出た。
だが、食べられない。
その事実が、
なぜか妙に面白くて仕方なかった。
小さな畑。
小さな芽。
そして口の中に広がる強烈な苦味。
それらが重なって、
静かな昼下がりの畑に、笑い声が一つだけ響いた。
「……不味いけど、悪くないな」
駄目な収穫と、
笑い話になる失敗。
そんな日常が、
確かにここには存在していた。




