第27話:畑を作る
水と火が確保できて、
最低限の住処もある。
次に必要なのは――食料だった。
「……畑、だよな」
口に出してみると、実感が湧く。
王都では、畑など意識したこともなかった。
食事は、用意されるものだった。
だがここでは、違う。
レオンは村外れの空き地に立つ。
かつて畑だったであろう場所。
草は伸び放題。
土は固く、色も薄い。
試しに、木の棒を突き刺す。
――カン、と乾いた音。
「……石だらけだな」
掘り返してみると、
小石、
大きめの石、
砕けた瓦礫。
作物が育つとは、思えない。
普通なら、諦めるだろう。
少なくとも、後回しにする。
だが、レオンは立ち尽くさなかった。
(やるしかない)
誰に言われたわけでもない。
役割でも、義務でもない。
生きるために、必要だから。
レオンは黙々と、石を拾い始めた。
一つ、
また一つ。
腰が痛くなり、
腕が重くなる。
生活魔法が、静かに補助する。
疲労が、ほんの少しだけ和らぐ。
だが、
石が消えるわけじゃない。
「……地道だな」
呟きながらも、手は止まらない。
午前が過ぎ、
昼を挟み、
日が傾き始める頃。
ようやく、
“土らしい土”が顔を出した。
黒くはない。
肥えてもいない。
それでも、
石だらけの地面よりは、ずっとましだ。
レオンは、鍬代わりの棒で土を耕す。
固い。
簡単には崩れない。
何度も叩き、
砕き、
混ぜる。
汗が落ちる。
息が上がる。
それでも、
不思議と嫌じゃなかった。
(進んでる)
それが、はっきり分かる。
昨日より、
今日。
何もなかった場所に、
“畑になりかけた場所”ができている。
それだけで、十分だった。
日が沈む頃、レオンは作業を止めた。
小さな区画。
とても畑と呼べる広さじゃない。
だが――
「……これでいい」
誰に評価されるでもない。
失敗を笑われることもない。
芽が出るかどうかも、分からない。
それでも、
自分で耕した土だった。
レオンは畑を見下ろし、静かに息を吐く。
痩せた土地。
石だらけの土。
それでも、
耕した。
それは、
この場所で生きるという、
小さな宣言だった。




