第26話:生活魔法の再確認
朝は、意外と普通に来た。
夜の恐怖が嘘だったかのように、
空は淡く明るくなり、鳥の声が戻ってくる。
レオンは身体を起こし、軽く首を回した。
「……生きてるな」
それだけで、今日は十分だと思えた。
火の跡を片付け、水を一口飲む。
昨日より、動きが少しだけスムーズだった。
ふと、視界の端に意識を向ける。
半透明のUIが、静かに浮かび上がった。
【生活魔法:微弱補助】
【状態:常時使用可】
【効果:作業補助/疲労軽減(軽)】
派手さは、相変わらずない。
攻撃魔法もなければ、
一瞬で家が建つわけでもない。
(……チート、ではないな)
正直な感想だった。
学園で見た魔法は、もっと分かりやすかった。
強くて、派手で、才能を誇示するための力。
だが、これは違う。
使っても、
手間は省けない。
努力は必要だ。
判断も、自分でしなければならない。
ただ――
やった分だけ、少し楽になる。
レオンは、壊れかけの壁に向かい、
拾ってきた板を当ててみる。
力を込めると、
板がずれにくい。
釘を打てば、
狙いが少し安定する。
「……なるほど」
一瞬で終わるわけじゃない。
だが、無駄に疲れない。
昨日より、
今日の方が、少しだけ進む。
それは、
“特別扱い”じゃなかった。
努力を無視する力でも、
苦労を消す魔法でもない。
(働いた分だけ、返ってくる)
レオンは、その感覚が気に入った。
学園では違った。
どれだけ真面目にしても、
どれだけ目立たずしても、
結果は最初から決まっていた。
評価は固定。
役割は不変。
だが、この魔法は――
嘘をつかない。
手を動かせば、
進む。
止まれば、
止まる。
それだけだ。
レオンは、深く息を吸い、
もう一度、作業に戻った。
板を運び、
石を並べ、
壁を補強する。
汗はかく。
腕はだるくなる。
それでも、
昨日よりは、確実に楽だった。
「……悪くない」
小さく呟く。
チートじゃない。
万能でもない。
だが――
この世界で生きるには、
ちょうどいい。
生活魔法は、
レオンにとって初めての“公平な力”だった。
努力を裏切らず、
役割を押し付けず、
静かに、支えるだけの力。
それで十分だと、
今は思えた。




