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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第20話:本当の本音

 夜が来た。


 火を起こすほどの準備は、まだできていない。

 壊れかけの家屋の壁を背に、

 レオンは地面に腰を下ろしていた。


 空は、広い。


 王都で見上げていた空より、

 ずっと低く、近く感じる。


 星がある。

 数は多くないが、はっきり見える。


 ここは、グレイウッド。

 捨てられた場所。

 誰も期待しない土地。


 視界の端に、UIが浮かんでいる。


 ――いや、正確には「浮かんでいた痕跡」だけだ。


 数値は表示されない。

 警告もない。

 役割も、ロールも、主張してこない。


 世界は、

 何も言ってこなかった。


(……静かだな)


 怖くはない。


 不安も、あるにはある。

 だが、それは生きる上で当たり前のものだ。


 評価される不安。

 役割を果たせない恐怖。

 誰かを失望させるプレッシャー。


 そういうものは、

 ここには、ない。


 レオンは、地面に落ちている小石を拾い、

 指先で転がす。


 意味のない動作。


 だが、

 それを止める理由もない。


 誰にも求められていない。

 誰にも期待されていない。


 何者であれ、

 何もしなくても、

 ここにいていい。


(……最高じゃないか)


 思わず、

 心の奥から、その言葉が出た。


 声には出さない。

 出す必要がない。


 前世では、

 役に立たなければ価値がないと思っていた。


 この世界では、

 役割を与えられ、

 それを演じることが存在理由だった。


 どちらも、

 同じだ。


 ――自分で選んでいない。


 だが今は違う。


 何もない。

 何も求められない。


 だから、

 初めて「選べる」。


 明日、何をするか。

 何もしないか。

 生き延びるか、休むか。


 すべて、

 自分の都合でいい。


(理不尽は……終わったんだな)


 はっきりと、そう思えた。


 終わったからといって、

 世界が優しくなったわけじゃない。


 明日は寒いかもしれない。

 食べ物も足りないかもしれない。

 魔物が出るかもしれない。


 それでも。


 それらは、

 誰かの物語のための理不尽じゃない。


 ただの、現実だ。


 レオンは、仰向けになり、

 星を見上げる。


 拍手もない。

 断罪もない。

 役割の名前も、もう聞こえない。


 ここからは、

 失敗しても、

 誰の筋書きも壊さない。


 成功しても、

 誰の期待も裏切らない。


 ――自由だ。


 理不尽の終わりは、

 破滅じゃなかった。


 静かな夜の中で、

 レオンは、ようやく自分の人生を手に入れた。


 第1部は、

 そこで、終わった。

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