第15話:追放決定
判決は、あっけなかった。
「以上をもって――」
教師が、事務的な声で告げる。
「レオン・グレイハルトに対し、
学園および王都からの永久追放を命じる」
一拍。
その後に続いたのは、
どよめきでも、怒号でもない。
満足した空気だった。
「妥当だな」
「むしろ温情だ」
「処刑じゃないだけありがたいだろう」
そんな声が、あちこちから漏れる。
正義が勝った。
秩序が守られた。
皆が、そう信じて疑わない。
「行き先は――」
教師が、書類に目を落とす。
「辺境、グレイウッド」
その名が出た瞬間、
会場に小さなざわめきが走る。
魔物が多く、
土地は痩せ、
中央の目も届かない場所。
――都合のいい隔離先。
「なお、再入国は認められない」
それで、終わりだった。
拍子抜けするほど、簡単に。
レオンは、静かに息を吐く。
(……やっと、終わった)
胸の奥にあった重たいものが、
すっと抜けていく。
恐怖はない。
絶望もない。
あるのは、
長い拘束から解放されたときの、
あの感覚。
前世で、
仕事を辞めると決めた夜に、
少しだけ似ていた。
王子アレクシスは、
堂々と前を向いている。
彼にとって、
これは正しい結末だ。
聖女ミリアは、
安堵したように胸に手を当てている。
守られる物語は、
無事に守られた。
誰も、レオンを見ていない。
もう、役目は終わった存在だから。
だが、レオンは思う。
(これでいい)
反論しなかった。
争わなかった。
理解も、求めなかった。
その結果が、これだ。
――追放。
世間的には、破滅だろう。
だが、レオンにとっては違う。
学園も、
王都も、
王子も、
聖女も。
すべて、役割に縛られた世界だ。
そこから、出られる。
たとえ行き先が、
荒れた辺境だとしても。
(人の目が届かないなら……それでいい)
教師が、形式通りに言葉を締める。
「以上で、式を続行する」
まるで、
一つの備品を片付けただけのように。
レオンは、軽く一礼した。
誰に向けたものでもない。
ただ、
この場所への区切りとして。
足を動かす。
会場の外へ。
背後で、
式典の音楽が再び流れ始める。
祝福の旋律。
未来へ進む者たちのための音。
レオンは、振り返らない。
――ここは、もう自分の世界じゃない。
(次は、静かなところがいいな)
それが、
追放される男の、
正直な本音だった。




