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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第12話:婚約破棄宣言

 式典は、終盤に差し掛かっていた。


 予定通りの挨拶。

 予定通りの拍手。

 予定通りの流れ。


 ――そのはずだった。


 王子アレクシスが、一歩前に出る。


 壇上の空気が、わずかに変わった。

 期待と高揚が、ざわりと広がる。


 彼は、一度だけ深く息を吸い、

 はっきりとした声で告げた。


「ここで、皆に伝えなければならないことがある」


 その瞬間、

 レオンの視界のUIが、完全に静止した。


 数値は動かない。

 警告も表示されない。


 ――実行フェーズ。


 レオンは、それを理解する。


「私は、本日をもって――」


 アレクシスの声は、よく通る。

 一言一言が、舞台用に最適化されている。


「レオン・グレイハルトとの婚約を、破棄する」


 一拍の沈黙。


 そして。


 ――歓声。


 拍手。

 どよめき。

 安堵と正義感が混ざった、熱。


 誰かが叫ぶ。

「当然だ!」

「勇気ある決断だ!」


 世界は、その宣言を待っていたかのようだった。


 レオンは、動かない。


 驚きもしない。

 眉一つ、動かさない。


 ただ、壇上を見ている。


 聖女ミリアが、王子の隣で目を伏せていた。

 わずかに震える肩。

 涙を堪える仕草。


 その姿に、観衆の感情がさらに加速する。


 UIが示すまでもない。

 この場の空気は、完全に一方向だ。


 ――正義は、こちら。

 ――悪役は、あちら。


 アレクシスは続ける。


「彼女――いや、彼の行動は、

 学園の秩序と、聖女の尊厳を著しく傷つけた」


 言葉は、丁寧だった。

 感情的ではない。

 だからこそ、疑う余地がない。


「私は、これ以上見過ごすことはできない」


 また、拍手。


 レオンは、自分の胸に意識を向ける。


 心臓は、静かに鼓動している。

 早くもない。

 遅くもない。


(……やっぱりな)


 予想通り。

 予定通り。

 世界の筋書き通り。


 だから、何も言わない。


 反論はしない。

 弁明もしない。


 ここで言葉を発した瞬間、

 それは“悪役の言い訳”として処理される。


 それを、もう学んでいた。


 王子の視線が、一瞬だけこちらを向く。


 困惑。

 戸惑い。


 ――なぜ、反応しない?


 その疑問が、はっきりと見て取れた。


 だが、レオンは答えない。


 無表情のまま、

 ただ、そこに立っている。


 観衆の誰かが囁く。

「最後まで反省がない……」


 別の声が重なる。

「やはり、悪役だな」


 それでいい。


 レオンは、内心で肩をすくめる。


(これで、一区切りだ)


 婚約は、役割の一部だった。

 断罪は、物語の通過点。


 この場所に縛り付けていた鎖が、

 一本、音を立てて外れた。


 壇上では、

 王子が正義の象徴として立っている。


 聖女が、守られるべき存在として微笑んでいる。


 そして、

 悪役は、何も語らない。


 ――それが、

 この世界にとって、

 最も美しい構図だった。


 レオンは、その完成図を眺めながら、

 静かに思う。


(ああ……やっと、終わる)


 次に来るのは、

 断罪か、追放か。


 どちらでもいい。


 ここではない場所へ行けるなら。


 拍手は、まだ鳴り止まなかった。


 それが、

 彼に向けられた最後の騒音だった。

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