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追放された悪役令嬢(♂)に転生した俺、チートを隠して辺境でスローライフするつもりが世界最適解になっていた件  作者: 南蛇井


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第11話:卒業式当日

 王立学園の卒業式は、盛大だった。


 高い天井から吊るされた魔法灯。

 赤い絨毯。

 整然と並ぶ来賓席と、正装した貴族たち。


 祝福のために用意されたはずの空間は、

 どこか「舞台装置」として完成しすぎていた。


 レオンは、その中に立っていた。


 制服は同じ。

 立ち位置も指定通り。

 形式上は、他の卒業生と何一つ違わない。


 ――それなのに。


 明らかに、場違いだった。


 周囲の視線が、触れない。

 避けられているわけでも、睨まれているわけでもない。


 最初から、

 存在しない前提で扱われているような感覚。


(ああ……完全に、外だな)


 レオンは内心でそう思う。


 悲しくもない。

 悔しくもない。


 むしろ、少しだけ感心していた。


 ここまで綺麗に排除されると、

 もはや個人的な感情すら感じない。


 視界の端に、UIが浮かんでいる。


 今日は、やけに静かだった。


 いつもなら、

 誰かの感情が上下するたびに、

 数値が揺れ、色が変わり、注意を引く。


 だが、今日は違う。


 好感度は固定。

 信頼はゼロのまま。

 恐怖と嫌悪は、綺麗な数値で停止している。


 ――完成している。


(嫌な安定感だな)


 まるで、

 もうこれ以上の調整は不要だと、

 世界そのものが判断しているかのようだった。


 壇上では、校長が式辞を述べている。


 長く、格式ばった言葉。

 努力。

 栄誉。

 未来。


 どれも、レオンには遠い。


 拍手が起こる。


 自然な流れで、

 次の人物が前に出る。


 王子アレクシス。


 立ち姿だけで、場の空気が変わる。

 ざわめきが、期待に変わる。


 ――王子ロール。


 この世界が最も愛する、中心人物。


 レオンは、少しだけ視線を向ける。


 アレクシスは、完璧だった。

 自信があり、優しげで、疑いを知らない顔。


 彼が正義だと信じれば、

 世界はその通りに動く。


(巻き込まれたな……お互い)


 アレクシスが語る未来は、明るい。

 希望に満ちている。


 聴衆は頷き、微笑み、拍手する。


 その輪の中に、

 レオンの席はない。


 そして――

 そのことを、誰も不自然だと思っていない。


 次に、聖女ミリアの名が呼ばれる。


 柔らかな空気が広がる。

 祝福と慈愛の象徴。


 彼女が一歩前に出た瞬間、

 UIの数値が、一斉に反応する。


 だが、やはり動きはない。


 上がりきった好感度。

 最大値で固定された信頼。


(……もう、決まってるな)


 レオンは悟る。


 今日、この式典は、

 卒業のためのものではない。


 区切りのための舞台だ。


 物語にとって不要になった存在を、

 正式に処理するための。


 不思議と、心は穏やかだった。


 これ以上、悪くなりようがない。

 これ以上、期待することもない。


 ただ一つ、はっきりしている。


(今日で、終わる)


 学園生活が。

 役割としての“悪役令嬢”が。

 この、息の詰まる場所が。


 レオンは、深く息を吸う。


 胸の奥にあるのは、恐怖ではない。


 解放の予感だった。


 式典は、滞りなく進んでいく。


 あまりにも順調に。


 それが、

 何よりも不吉だった。

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