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三題噺もどき3

あくる朝

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくじゅうご。

 


 ヒヤリとした空気に思わず体が震える。


 はたと目が覚める。

 ぼやけた視界が広がり始め、頭痛もしだす。

 横を向いていたせいか、肩が痛み、ゆっくりと仰向けの状態に体を動かす。

 これはこれで、背骨が痛むのだけど致し方ない。

「……」

 暑いとはいえ、冷房の点けっぱなしは合わないようだ。

 さすがに寒すぎて鳥肌が立っている。

 妹は暑いだろうと思って冷房を夜の間は点けっぱなしにしているのだけど、タイマーぐらいはつけていてよかったかもしれない。

 これでも、夏用のモノではあるがブランケットを被ってはいるのだ。それでも、寒いと思ってしまうんだから、相当この部屋は冷えている。

「……」

 あぁ、妹の為にというが、別に同じ部屋で寝ているわけではなく。

 それぞれの為に部屋はあるが、仕切りというか壁がなく繋がっている部屋なのだ。だから、1つの部屋にある冷房をつけて居れば全部の部屋が冷えると言う感じなのだ。もともと冷房は妹の部屋にある一台しかないんだけど。

「……」

 ぼんやりとはしているが、頭痛のおかげで割と思考の回りは早い。

 もうこの家には誰も居ないんだろう、静かでいいことだ。

 そういえば、今日から学校かぁ。昨日で夏休み最後だと言って、かなり遅くまで宿題をしていたが、果たして終わったんだろうか。まぁ、その辺は割とずる賢くうまくするやつなので、一ミリも心配はしてないが。

「……」

 しかし、今は一体何時なんだ。

 昨日までが忙しすぎで、曜日感覚も時間の感覚も若干おかしくなりつつある。

 カーテンの隙間から見える空は、まだまだ青い。きっと外は想像もつかないほどに暑いんだろうなぁ。冷房で冷えすぎて寒いなんて言っている方がおかしと思われそうだ。

 まだ午前中ではあることを願うが……特に何もする予定はないのでいいんだけど。

「……」

 枕元に置いてある携帯に手を伸ばし、表示された時間を確認する。

 昼前……まぁ、一応午前中の範囲内だろう。ギリギリではあるけど。

 寝すぎたのには変わらないので、この頭痛はそのせいだろう。

 昨日は割と早い時間い寝たと言うか、落ちたので、確実に寝すぎだ。

「……」

 昨日までの三日ほど。

 辞めたはずの仕事をしていたもので。

 給料はパートと同じなのに、仕事量は正社員並みという仕事。

 さすがに、久しぶりというのもあってだろうが、疲れが一気に出たのだろう。

 人と関わる仕事だから、それだけでも疲れるのに、あの人たちに囲まれてご機嫌取りをすることにもまた疲れてしまった。

「……」

 まだ、給料が出るだけマシだと思っていたい。

 そもそも、手伝いなんて言うが、それを前提でシフトを組まれていたことに疑いを感じてはいるが……その上帰り際にまた頼むかもしれないなんて恐ろしいことを言われたからな。

 頼むから休む暇をくれと言いたい……何のために辞めたんだが全く分かっていない。

「……」

 あそこの人たちは、確かに良い、優しい人達ではあるんだ。

 上に立つあの人も、理不尽に思うことは多々あれど、優しい人ではあるんだろう。

 根っこがあえば、それに対してついていこうと思うだろうし、あぁいい人なんだなぁって素直に思えるんだろう。

「……」

 しかし残念ながら、合わない人間にとっては、辛さしか感じ得ない。

 自分のワガママかもしれないし、自己中かもしれないが、あの人とは分かり合えない。

 そもそも人間としての出来が違うし、立場が違う。他の会社に比べたら、下の人たちとの距離は近いんだろう。それが良いことかどうかは知らないが、私にとってはよくなかった。

 せめて別でやってくれればいいのに、いいようにコマに使われているようにしか感じられない事の方が多かった。

「……」

 いや、ホントに、優しい人ではあるんだ。

 こちらが、仕事に対しての苦しみを抱えてしっまたときは話は聞いてくれるし。何かがあって悲しみに暮れて居れば、話を聞いてくれるぐらいはしてくれる。

 ただ、話を聞いたうえでの回答にどうしてもズレが生じてしまう。他人同士だから仕方ないとはいえ、あまりにもその溝が大きくてついていけない。ついていけなかった。

「……」

 類は友を呼ぶとは違うかもしれないが、似たもの同士でなければあの人の元についていくことは出来そうにない。似て居なくても、あの人のその思考に賛同できる何かがなければついていく事は出来そうにない。

 多少なりとも近寄ろうとはしてみたが、どうしてもできなかった。そもそも、あちらがその溝に、ズレに気づいていないのだからこちらの負担が大きくなるだけで、最終的にはつぶれるだけだ。つぶれた結果が現状だ。

 なんというか、もう少しうまくやっていれば何かは変わっていたのかもしれない。

 何かが、できていたかもしれない。

 いま、こんな風になっていなかったかもしれない。

 いつだって。後悔ばかりして、嫌なことばかり考えて。

 こんな風に、先も見えない真っ暗な人生ではなかったかもしれない。

 これまでだってずっと、そうして後悔ばかりして、失敗ばかりして。

「……」

 いつもいつも。

「……」

「……」

「……ぁ」

 ぼやける天井がさらに滲む。

 なにかが肌をつたい、落ちていく。







 お題:悲しみ・優しい人・空

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