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良いのか……??????

早く戦ってくれ。

 さて。


「うーん実験自体は明日から始めるかな」


 アルトの世話をしながら、改めて今日の出来事を振り返る。

 主に元勇者との接触と新たに得られた情報について。


 そもそも、この世界から異世界へと召喚されるケースは極稀に存在していたらしい。それで、今回の大変革は恐らくその異世界とこの世界が繋がる……所謂次元の穴的なものができたのではないか、という……これは政府や元勇者達の推測らしいが。

 勇者君によると、彼が召喚された世界で戦ったことのあるモンスターが結構いることから、これは間違いないとされている。


 世界各地に大量に出現していたり、雷龍のようなデカい個体もコチラに来ていたりすることから、次元の穴と言うよりかは魔法による世界の「変化」説の方が当てはまるらしいが……それも含めて次元に穴が空いたと説明するとかなんとか。


「分かりやすい黒幕がいる可能性、ねぇ……?」


 このレベルのことをしでかせる存在に、例え勇者であっても勝てるとは思わないが……まぁ、何か対抗手段があるのだとしよう。


「とはいえ重要なのはそこじゃない」


 今回俺が重点的に聞きたかったのは、元勇者とはなんなんのか?という部分。


 回答は単純だった。


「異世界に行って、帰ってきた人達のことです!」だと。


 いやぁ……それはそうだろうけどさぁ……


 困惑しながらも聞き取りを続け、わかったことは、


 ①勇者とは一度異世界での戦闘を経験している者のこと

 ②もれなく全員めちゃくちゃ強い。

 ③送還魔法によって帰還する際にステータスやレベルは持ち越せず、帰ってきてから大変革までは戦闘経験があるだけの一般人として生きていた。

 ④大変革によりステータスシステムが出来て、元のステータスを得た。

 ⑤慎二君自身も含めた三人の国家に協力的な勇者によって発電所の雷龍は討伐された。


 の、5つ。

 うーん多い。長い。


「…………ステータスシステムって、『神の慈悲』のことだよな? なーーーんか引っかかるなー」


 黒幕の目的が分からないんだよな……。


「勇者様方は一回チートで無双して帰ってきて、もっかい現実でもチートで無双できるわけだ。羨ましーこった」


 これは本当にそうである。

 あまりにも全てが元勇者に都合良すぎる。


「黒幕に繋がるとしたらその辺かな。」


 ついでに異世界産のアイテムや魔法薬、魔道具などの今の世界特有の物品の取り扱い方や相場なども聞いたが、一旦割愛。



 ちなみにまだまだまだまだ纏めることと考察することがある。





 ◆


 貰った腕輪ことアイテムボックスを腕に嵌めて、取り出したのは……高科商社お抱え錬金術師の研究レポート。


「うーわ宝の山」


 高科商社お抱えとか呼ばれる訳だ。めちゃくちゃ優秀な人に違いない。


「こっちがマウスに魔石を与えたときの反応に関する対照実験で? こっちが成功したマウスの反応で? お、これ、魔石の特性分析じゃん!」


 やばい。すごい。趣味で虫について調べてるだけの奴に渡すレベルではない。


「おぉ……ゴーレムの作成方法と操作方法まである……やっぱガチすぎじゃない???」


 今のところ、元から懐いていた一般的な動物種以外のマウスなんかは、身体能力が上がったり知能が上がったりすることはあるが、結局行動は元の本能に従うらしい。


 多分飼い犬を錬金術で魔物化して戦うのが普通の形になるんだろうな。

 今後の課題は、実際の魔物を扱うのは危険過ぎるってことと、ほとんどの生物は身体能力や知能を上げても人間に従ってくれないってことかな。


 掲示板の錬金術師の集いにいる人達もこのレベルなのか? 本気か??? というか俺にできることあるか……???


 俺が一人家で趣味に耽っていた間に、世界はすごい速度で変わっている。

 それを成した張本人達に、専門家達に、素人の俺が勝つ手段なんてあるだろうか?


「んーーーーーー。やっっぱ情報戦だよな……」


 錬金術師は、様々な事象を研究する職業だ。

 恐らく分野ごとに専門家がいて、俺には想像もつかないぐらいの速度で進歩していっているはずだ。

 懇意にしている高科商社が偶然生態研究の分野を扱っていたおかげで、ある程度この分野は追いつけそうだが……他の分野についても少しでも情報がほしい。


(まぁ、今回の件については、俺が他より少し遅れて生態研究分野に進むことを見越していた圭吾が事前に手を回していたのだとしても俺は何も驚かないが。それだけの有能さ具合を見せつけられたわけだし。)


「まぁそんなことを考えても仕方ないけどさぁ……情報ねぇ……」


 アルトを撫でながらボンヤリと考える。アルトを……撫でながら……え?

 蜘蛛の……俺に懐いてる……小型生物の……アルトを……。


「いやいやいやいやいやいやいや」


 いやいやいやいや。ねぇ? そんなまさか、ねぇ?

 ハハハ、ねぇ???


 目があったアルトと、せっせーのーでーよいよいよーい、みたいな謎の動きをしながら、なんとか動揺する心を押さえつける。


「おいおいおいおいおい」


 今の世界で俺が上に行くために必要なのが情報。

 情報戦を行うにあたって……そう、例えば……例えば、意思疎通が可能な虫が使用できたら?


 もう一度アルトを見る。

 もちろん、最初からアルトで実験を行う気はない。危険だからね。

 ただ、ちゃんと虫の魔物化に関する研究を実用化できたとして……普通ならば虫は人に懐かない。だから、この状況で、虫が情報収集してるなんて想像もつかないんじゃないか……??

 他人の研究室に侵入とか……資料の閲覧、回収とか……ハハハ。


「待て待て待て待て。それは倫理的にアリか? 本気か? 他人の研究を盗んで、俺の心は傷まないか? 胸を張れるか?」


 うーん余裕だ。全然傷まん。

 そもそももう弱肉強食になったんだしこの世界。仕方ない仕方ない。

 この世界をこんなふうにした黒幕が悪いよ。おれ、悪くない。

 外に蔓延るモンスター共に食われないために必要だったんだ。……まぁ上に行くためにとか思っきり言ってるけど……。


「とりあえず……うん。圭吾に相談だな」


 事後報告でそんな会社の信用に関わるようなことするなら融資は取りやめだ! 縁を切る! とか言われたら詰む。あと実はなんかちょっと止めて欲しい。人間の心って大事じゃん。優しさとか。


 もっかい電話した。

























 …………………………………………やっていいって言われた。嘘でしょ? やるの???




次回投稿予定日は6月21日、18時の予定です。

よろしくお願いします。

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