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ありえない方向から社会復帰した。  作者: 水鳴諒(猫宮乾)
――第十三章(完結)――
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■40:神様


 僕はその後も茨木と、常に一緒に過ごした。相変わらずお互い外見的に老化する事は無かったが、さすがに頭の中身まで子供というわけではない。


 例えば、少し前に世界貴族使用人連盟の制度が変化した時には、僕も口を出してみたりした。なんでもサイコサファイアが機能を停止したらしく、一時的な混乱が発生したのだ。自体を収めたのはギルベルトで、「これはメルムの意思を表示していたに過ぎない」というような事を口にしていた。僕にはその意味は分からなかったが、青ざめていた人は多かったように思う。


 また、箱船が発掘されたというニュースを見た。それも、まだ西暦だった時代の話だ。その中で、古代にもフォンスがあったらしいという解説報道番組を見て、僕は茨木の研究が進むかも知れないと思って、喜んだりもした。茨木はそんな僕を優しい表情で見ていた。


 僕の子供達――日本華族も少しずつ増えてきた。この前は、旭峰家の舞佳ちゃんが、昔学校で一緒だった鷹薙さんの長男と結婚した。フォンスの研究機関で一緒だったのがご縁だそうで、幸せそうな顔をしていたのが、印象的である。ちょっと年の差はあるが、僕と茨木よりは全然無いので、黙っておいた。どうやら僕は、自分を保護者だと認識すると、過保護になる傾向があるようだ。茨木にいつも苦笑されている。


 ――そういえば不思議な事に、サイコサファイアが機能しなくなってから、僕は蛇の夢を見なくなった。何か関係があったのだろうか?


 さて、ギルベルトから連絡が来たのは、そんなある日だった。

 珍しく真面目な顔で語るギルを眺めながら、僕は頷きつつ聞いていた。


「――という、理屈だそうだ」

「僕が神様ねぇ……」

「神様というか、神様と同じことが可能だという話らしい」


 それを聞いて、僕は腕を組んだ。目を瞑り、首を捻ってから、茨木を見る。


「僕が神様ならば、僕が神様でない世界を作る事もできるんだよね?」

「ええ、そうなります」

「つまり――今のまま、僕は神様ではないけど、幸せだから、この平和が続く事を祈るよ」


 僕がそう言うと、ギルベルトが息を飲んだ。それから、彼は何度か頷いた。


「お前、問題解決方法を聞いていたのか?」

「え? ううん」

「それとな、愛情が無いと、お前もいつか、過去を見てしまうかもしれないらしい」

「それはあるから大丈夫。茨木がいてくれる」

「――現状維持コネクトと言うそうだ」

「一生茨木との愛を現状維持する自身もあるよ」


 そんなやり取りをし、最後に苦笑して立ち上がったギルを、僕は見送った。

 そうして――茨木と二人になった。


「ねぇ、茨木」

「何かご用ですか?」

「――もしいつかこの世界が滅びる時が来たら」


 僕は指を組んだ。それを膝の上に乗せてから、天井を見上げた。


「僕達は、一緒に過ごそうね」

「――かしこまりました」

「もし、それで、運良く生き残る事が出来たらさ」

「ええ」

「箱舟に乗っていたから助かったって、みんなに話そう」

「何故ですか?」


 驚いた声の茨木を見て、僕は笑った。


「地球という箱船は、きっと沢山の生き物を、無意識に助けてくれるんじゃないかと思うんだ。だから――僕達は、きっと滅亡後も生きていける」


 そんなやり取りをして、僕は窓から星空を見た。星の寿命については、意図的に忘れておくことにした。


 その夜もキスをして、僕は茨木と共に眠った。

 次に来る朝も、待ち遠しい。



 ――その後も世界は、続いていった。





【完】





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