■35:衝撃
もう、新年と言われる時期が、終わろうとしていた。
今日は、茨木が僕の服を普通に脱がせて、寝台に押し倒した。
事後――茨木の腕の中で、僕は静かに告げた。
「茨木といると、僕は満たされるんだ」
「――私もです」
「ずっとずっと一緒にいてね」
「ええ。ずっとおそばにおりますよ」
「今年も一年よろしくお願いします」
「こちらこそ」
こうして、僕達の新年は過ぎていく。冬の思い出はテーマパークにするはずだったのだが、何故なのか変な方向に進んでしまったのは、誤算である。
「私は、琉唯様をずっと見ていたい。もっと様々な顔が見たいんです。体の全ても心の全ても知り尽くしたい――こんな欲求を抱いたのは、生まれて初めてです」
それを聞いて、僕は赤面した。茨木が嬉しい事を言ってくれたからだ。
その後二人でダイニングへと向かうと、お粥が出てきた。
七草粥の日であると、僕はやっと思い出した。
薄い塩味のお粥は、胃に優しい。壁際のシェフさんが穏やかにこちらを見て、微笑している。一口ずつ大切に食べながら、僕は茨木を見た。茨木は僕の少し後ろに控えている。
――今年も、色々な所に出かけ、色々なものを食べ、色々な音楽を聴き、色々な絵画を見て、そして茨木の行きたい所に一緒に出かけ、僕の行きたい所には共に来てもらい、何より沢山体を重ね、そうして愛を深めたい。これは、毎年の僕の抱負のようなものだ。
「琉唯様、サンジェルマン様より先ほどご連絡がございました」
「青海くんから? 何だって?」
「――結婚式の招待状が届いております」
「えっ」
僕はお粥を掬っていたレンゲを取り落としそうになった。
「誰と?」
「――お相手の方を連れて、後ほどご挨拶に来られるそうですよ。日程を調整させていただいて、宜しいでしょうか?」
「うん、勿論!」
このようにして、衝撃から始まった冬は、衝撃と共に幕を下ろした。




