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正義032・剣か野菜か

 町を出てから約1時間後。


 エス達は2つのクエストをあっさりクリアしていた。


 まず、小鬼(ゴブリン)討伐のクエストだが、内容は『30体の小鬼を討伐する』というもの。


 これは『ロズベリー大草原』に到着後、いくつかの小鬼の群れを討伐することで達成した。


 本来、小鬼といえども群れを相手にする場合は慎重に戦うのがセオリーだが、エスとユゼリアの前には関係ない。


 問答無用で群れを見つけては突撃し、あっという間に30体分の魔核と耳――討伐証明のために切り取る部位――が集まった。


 次に薬草採取のクエストだが、こちらはエスが召喚したジャスティス1号が大活躍。


 彼は邪悪な存在への嗅覚に優れるだけでなく、普通の意味でも鼻が利く。


『20本の回復草を見つける』というクエスト内容だったのだが、2本目以降の薬草は彼の鼻の良さですぐに見つかった。


 そうして早々にクエストが終わった後、エス達は草原エリアから少し外れた一角にマットを敷いて休憩をとる。


「本当、エス君達とクエストに行くと感覚が狂うよねー」

「ジャ、ジャスティス1号も想像以上に万能でした……邪獣が出ても蹴り1発で倒しますし」


 携帯食のパンと干し肉を片手に、苦笑いを浮かべるラナとヴィルネ。


 エスとユゼリアの強さはもちろんのこと、ジャスティス1号の能力もぶっ飛んでいる。


 当初は2~3時間でのクエストクリアを見込んでいたが、実際はその半分もかからなかった。


 それどころか、移動に要した時間を考慮すれば正味20分もかかっていない。


「ところで、今朝ユゼリアちゃんから聞いたんだけど、エス君は剣も使うんだよね? 木の枝みたいな変な剣で、食べられるって話だけど……本当なの?」

「本当だよ!」


 ラナの質問に答えたエスは、右腕を天に掲げる。


「来たれ! 正義執行!――【正義剣(ジャスティスソード)】!!」


 黄金の光が明滅した後、エスの右手に現れる正義剣。


 敵がいないと本来の能力も発揮されないが、呼び出し自体はいつでも可能なのだ。


「ほら。これが正義剣!」

「うわ、本当に木の枝みたいだねー。実際は野菜なんだっけ?」

「うん!」

「すごい……こ、こんな面白い剣があるんですね……」


 ラナとヴィルネは剣に顔を近付け、まじまじと観察する。


 ユゼリアから話には聞いていたが、実物を見ると想像以上に変な剣だった。


 興味を引かれる2人の隣で、ユゼリアが「ねえ」と目を細める。


「なんか……最初より短くなってない? 食べた分って戻らないの?」

「ん? 送還してれば戻るはずだよ。でも、たしかにまだちょっと短いかな?」


 剣身のなくなった部分は少しずつ回復していくが、見たところまだ完全には戻っていない。


「戻るのを待ってもいいけど、せっかくだし……」


 エスはそう言うと、正義剣を地面に突き刺す。


「なにしてるの?」

「土に埋めたんだよ。こうしてるとすぐ育つんだ」

「育つ!!?」

「うん、野菜だから」

「えぇ……?」


 エスの答えに唖然とした顔をするユゼリア。


「それってもはや、ただの野菜なんじゃ……いや、野菜だとしてもおかしくない?」

「まあ便利だしいいんじゃない?」


 1人問答を始めたユゼリアに言って、エスは干し肉を取り出す。


 毎回分けてもらうのも悪いということで、町を出る前に買ったのだ。


「ジャスティス1号も食べるか?」

「ジャス!」

「ジャスティス1号も肉を食べるんだねー」


 くつろいでいたジャスティス1号に干し肉を渡していると、ラナが笑って言う。


「猫っぽい感じだし、やっぱり肉食なの? それとも雑食―?」

「基本的に何でも食べるよ。ただ、栄養にはならないけどね」

「「「……???」」」


 ラナと隣で話を聞いていたユゼリア達が首を傾げる。


「ジャスティス1号の栄養源は正義力(ジャスティスパワー)なんだ」

「正義力……って、たしかエス君の……?」

「うん」


 エスはそう言うと、ジャスティス1号の頭にポンと手を乗せる。


 そして、自らの正義力を送り込んだ。


「ジャス♪」

「こんな感じで、俺の正義力をチャージするんだ。今は元気だから必要ないけど、消耗した時とかはチャージで回復させるんだよ」

「ジャス!」


 ジャスティス1号の原動力は、エスと同じ正義力。


 体力が減った際には、ガソリンのように正義力をチャージできる。


 ただ、送還中は正義剣のように自然回復していくので、チャージの必要はあまりない。


「へえ……本当変わってるよねー」

「ですね……」


 チャージを終えたジャスティス1号を撫でながら、ラナとヴィルネが呟く。


 ユゼリアは「もう驚かないわ……」と言って、自分の干し肉を取り出していた。


 それからしばらくの間、各々に軽食を食べる時間となり、簡易的な休憩が終わる。


「そうだ、正義剣を抜いとかなきゃ」


 エスはそう独り言ちて、地面に刺していた正義剣を抜く。


「あ」


 元の長さに戻れば十分だったのだが、この辺りの土が栄養豊富だったらしい。


 少し埋めすぎてしまったのもあってか、剣の長さは埋める前の2倍ほどになっていた。


「伸びすぎちゃった」

「成長早くない!!!?」


 驚くラナとヴィルネの隣で、ユゼリアの見事なツッコミが響き渡った。




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