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<状況23>
<その9-16>
<盗賊、現る。>
ジャヴォとソフィアも、
夕方になる前には、
買い物も終わり、
二人は、
公共駐車場につくと、
配送ドローンが届けた、
お店ごとの買いもの荷物を、
反重力浮遊クラフトに積みこんだ。
この時間、公共駐車場は平日ながらも盛況であり、
夕方の買い物にむけて、利用が増えている頃合である。
買い物客にとり、駐車代が無料なことは嬉しいかぎりである。
だが、
ジャヴォたちは、
帰宅のしたくに、取り掛かっていた。
客足の増えかたとは逆に、早々の帰り支度である。
住んでいるところが、
『シュタットル』 市の近場ならよいが、
『アルムット』 村までの帰り時間を考えれば、
買い物を切り上げるのに、ちょうど良い頃合である。
ジャヴォが、
買い物パックや、
買い物コンテナを荷台につみこんで、
ソフィアは、
『銀球』 をつかって、
買い物リストをチェックしていた。
緑色パーカーの背中に垂れているフードのなかに、
すっぽり納まって、待機していた銀球が、
『 ふよふよフヨフヨ 』 浮上して、
リスト照合を補助していた。
購入品と配送品に間違いがないか、
ホログラム投映させながら、
ソフィアと銀球とが、
ダブルチェックで、
見比べていた。
そして、
軽く食事をすませて、おトイレもすませた。
むッ!
むむッ!
むむむッ!
ソフィアちゃんのおトイレを、
描写するわけなかろうがーッ!
乙女の音入れを・・・、
書くわかなかろうがーッ!
恥をしれーいッ!
こんバカちんガーッ!
*****
ジャヴォが、反重力クラフトを運転して、
『シュタットル』 市からの帰り道、
広くて長い一本道の、
幹線道路を滑走していた。
「陽も明るいうちに帰れてよかったわい。」
ジャヴォは、
心なしか運転も軽やか、
買い物の帰りとは思えない、
疲れを感じさせない様子であった。
「この辺りは、まだまだ危険ですから、ほんと良かったです。」
ソフィアも、
ドライブシートの左隣り、
ナビゲートシートに座りながら、
心配とは裏はらに、気持ちは和らいでいた。
戦後の、
不安定な世の中で、
今だ盗賊たちが出没していた。
まだまだ、一掃されずに生き残っているのである。
「今日は、けっこうな弾丸ショッピングじゃったが、
ソフィア殿、疲れてないですか?」
ジャヴォは、横目でチラとソフィアの表情をうかがった。
「いえ、ぜんぜん大丈夫です。」
ソフィアは、疲れを感じさせないニッコリ笑顔でこたえた。
「さすが、若いですな。 うん、羨ましい。」
「ジャヴォさんこそ、車椅子を押しっぱなしで大変だったでしょ?」
「なになに、わしはこれでも鍛えてますから、大丈夫じゃよ。」
「それに、ソフィア殿は軽いですから。」
「ええ、両脚がないですからネ。」
ソフィアは、そのまま受け答えニッコリかえした。
「あー・・・、しもうた。
そういう意味じゃぁ・・・、なかったんじゃがぁ・・・・・。」
「失敬、誠にもって失敬つかまつった。 失礼の極みでござった。」
ジャヴォは、言ってしまってから、ハッと気がついた。
ついつい失念していたことに恐縮していた。
体の事情で軽いとはいえ、軽々と、
言ってしまったことに。
「いえいえ、わかってますよ。 そんなつもりじゃ無いことくらい。」
「このくらいで気にしてたら、いまの世のなか生きていけませんから。」
ソフィアは、とくに気にした風もなく、
ことばを続けた。
「だって、うちのお兄ちゃんなんか、」
『ソフィアは脚がないくせにナマイキなッ!』
『なんでも自分でやろうとするなッ!』
『もっと俺を頼れッ!』
『もっと俺を馬車馬のごとくコキ使えッ!』
『もっと俺を奴隷のごとく悪しざまに罵れッ!』
「こんなんですよぉ。 もう、気を使ってるのやら使ってないのやら、」
「怒っていいのやら、すなおに頼っていいのやら、」
「最後の、 “ 罵れッ! ” なんて何なのかしらぁ、
もう、やんなっちゃう。 お兄ちゃんったらぁ・・・・・。」
ソフィアは、
ちょっとプリプリとして見せた。
「ふッ・・・、はははッ、ハハハハハーッ・・・、
なる程に、ルッター殿らしい。」
ジャヴォは、
われ知らずと、笑いがもれ出した。
「ねえ、でしょう。 プっ、あははッ、あははははーッ。」
ソフィアも、
それ知らずと、笑いにつられ出した。




