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<状況23>
<その7-7>
<バー『リンダ』>
『 ばーんッ!』
テーブルが叩かれた。
「お、お母ちゃんイヤラシイッ!」
リシアの、
ほんのりと、
ホロ酔い桜色の顔は、
あっという間に真っ赤になった。
元から色白なせいもあり遥かに目立っていた。
もう、
リシアは、
大声をあげると、
勢い外へと飛び出していった。
大皿に残っているカラアゲが跳ね上がり、
テーブル下へコロコロリン転げ落ちそうな勢いであった。
「あら、あら、あららァ・・・。 もう、ねぇ・・・。」
「あんたの年の時には、 あたしなんかねぇ・・・。」
「ふう、・・・どうやら、まだ何にも無いよ~ね~、つまんな~い・・・。」
リンダは、落ちずに命拾いしたカラアゲの中から、
コロっとした一つを選びフォークで突き刺し、
口のなかへとパクリ運び込んだ。
『 モシャモシャ、モチャモチャ、』
「うん~ん、ジュ~シィ~♪」
きっと、
リンダは、
それはもう、
娘リシアの、
あられもない、
おしげもない、
はじらいもない、
はずかしげもない、
まいみだれ、悶えること、
己の下心、忌まわしいままに、
隠しモノ肌けて、舌がはい乱れるままに、
そんな、娘の肢体を、いや、モロ痴態を想像していた。
そんな事なのかもしれなくもないかもしれなかった。
リンダはそのことを言うにいとわず、
言うことを止めないばかりか、
言いまくっていた。
それどころか、
ハシリドコロか、
そんなところか、
とことん言い続けた。
とんことん、トンコトン♪
なーんかね、
白けちゃったわぁ、
と言わんばかりの顔になり、
ホロホロと酔いも醒めかけていた。
「ふぅ、 あーあぁ・・・。」
ちょっと、
ため息まじりに呟きもらした。
「さーて、あっちの男ドモでも、カマってやろうかしらねェ。」
そして、
席を立つと、
マードックとルッター達の方へ、
しなを作りつつ、
艶めくままに視線を送り、
右手にはウォッカリンの酒瓶、
左手にはテキーライムの酒瓶、
二刀流の構えで向かって行った。
それは、
眼光鋭く、
獲物を見つけ、
新たな相手にいどみ、
立ち合い向かう剣士のようであった。
危険かえりみず死地にむかう剣豪のようであった。
剣呑あやまたず酒池にむかうシュゴイ酒豪剣豪のようであった。
もうッ、
どうでもよかった!
ただ、
ここで、
ひとつ言えることは、
さっきのリンダは、相当な大間違いをしていた・・・・・。
それは、
なんなのか、
酔いのせいなのか、
イタズラ心のせいなのか、
もともと性格的なことなのか、
こともあろうに、自分の娘にたいして、
勢いよく親指ニギリを押し付けていたのである。
それだけであれば、まだ良かったのだが、いや良くないが、
いつのまにか、手の形が変わり、握り方が変わり、意味が変わっていた。
リシアに対して、
“ 中指オッタテ握り ” を押し付けていた。
アレである。アレなのである。アレを押し付けていたのであるッ!
アレと言ったら、もう、アレなのであるッ!
アレと言わなくても、それは、アレなのであるッ!
アレれ~アレれれ~、取りも直さず、アレなのであるッ!
アレから転じてアレとなす、すなわち、アレからこるむのアレかげんであるッ!
ただ、
リンダは、
そんな中でも、
酔ってるとはいえ、
左手の親指と人差し指で、
輪っかを作り、オッタテ中指に、
『 くいくい、クイクイ、Q~Q~Q~♪ 』
それ、得意になって通し捲くりはしなかった。
これだけでも幾らかはまし、良かったかもしれない。
この宇宙において、
この世界での、
この星の、
この国、
ここ、
それ、
“ 中指オッタテ握り ” は、
このように言われるサインであった。
ふぁっきゅーッ!
ファッ、Qーぅッ!




