48 遺跡調査
「この辺りだよな?」
パパスさんが先頭にたち僕たちは遺跡調査に向かった。
「そうだと思います。」
僕は方向音痴だ。適当に同意しておく。
「このまま進むとあるはずですよ?」
マァムさんも地図を見ながら答える。
そのまま真っ直ぐ進むと、やがて崖が見えてきた。
僕たちは崖の下にいて、とても登れそうにない高さだ。
もう少し進んで行くと、崖の側面に大きな穴があいていた。
聞いたところによると、最近この辺りで土砂崩れがあったらしい。
その時にこの穴が現れて、発見者が中に入って見ると人工物だとわかった。
中には扉があって、どうやっても開かずにそのまま帰って来たらしい。今回の依頼は遺跡と思われる穴の調査だ。
「ここだよな?」
パパスさんが訪ねてきた。
「はい。位置的にここだと思います。」
マァムさんが答えた。
「ここで間違いありませんね。」
確信はないが僕もとりあえず答える。
「よし。入るか!」
僕たちはそのまま穴の中に入った。
「ライト」
マァムさんが魔法で光源を出してくれた。
ギルドからは中に魔獣は居なかったと聞いているが、油断は出来ない。
僕たちはゆっくりと前に進んで行く。
「明らかに人の手が加えられているな。」
パパスさんが言った。
穴の中はキレイなカマボコの形になっていて、壁は石で補強されている。
「もしかしたら機械文明以前の遺跡かも知れませんね。」
マァムさんが言う。
お股はゆるいが感想は鋭い。
この人以外と教養があるのかも知れない。
ーー体感で十分ほどだろうか。ゆっくり進んでいたので、どれくらいの距離を進んだかはわからないが、大きな扉があった。
「まぁ、人の力じゃ開かないよな。」
三人で押したり引いたりしたが、びくともしない。
おそらく無理矢理開けるのではなく、何か仕掛けがあるのだろう。
三人で扉の近くを調べる事にした。
しかし、何も見付からない。
「特に変わったものはねえな……」
パパスさんが言った。
「そうですねぇ……」
マァムさんも同意する。
「扉を壊すしかないかもですね。」
僕は落ちてた長っひょろい石コロで壁にこびりついているコケをはがしながら言う。
先ほどからそうやって時間潰しをしている。
仕掛けなんて見当たらない。どうせ探しても何もないのだから、二人が諦めるのを待っているのだ。
「マァム、ちょっと魔法ぶちこんでみろよ!」
パパスさんが物騒な事を言っている。
「こんな場所で魔法なんか撃ったらどうなるかわかりませんよ?」
マァムさんがイヤそうな顔をする。
確かにこんな場所で魔法を使ったら、反動で僕たちに何があるかわからない。マァムさんの攻撃魔法は火属性のものだからだ。
コケがごっそり剥がれた。
この壁の石、窪んでるみたいだ。
せっかくなので奥まで全て剥がそう。
「どりゃあ!」
ガッキィン!
急にパパスさんが扉を切りつけた。
当たり前だが、パパスさんの剣は先端が折れた。
「なにしてるんですか……剣なんかで壊れる訳ないじゃ無いですか。」
僕はあきれて言った。
ん? 奥の方に突起があるぞ
「くそっ!……帰るか。」
パパスさんが悔しそうに言う。
「そうですね。帰りましょう。」
マァムさんも同意した。
……ゴゴゴゴゴ!
扉が開いた。
「……」
「……ダイ、お前なんかしたか?」
「壁に突起があったんで、ツンツンしました。」
突起を押したくなるのは人間のさがである。
ーー僕たちは扉の中に入った。
「扉の中と外だと空気が違うな!」
パパスさんが深呼吸した。
しかし、中の空気がおいしいわけではなく、カビ臭さが増したかたちだ。
なぜ深呼吸したのかはわからないが、身体にはあまり良くないと思われる。
扉の中は広い空洞になっていて、真ん中には祭壇のようなものがあり、その上に楕円形の物体が乗っている。
端の方は暗くて良く見えないが、祭壇以外に変わったものは見当たらない。
……この場所、来たことがある?
何かイヤな感じがする。
「扉も開いたし帰りましょう! 特別報酬貰えますよね?」
僕は早くここから離れたい。
早くここからでなければ。
「いや、普通祭壇を調べるだろ。」
パパスさんが不思議そうな顔で言う。
「すごいホコリですね。」
マァムさんはすでに祭壇に登っている。
ーーダメだ。
「マァムさん、さわっちゃダメです!」
マァムさんが楕円形の物体のホコリを手で払った。
「……え?」
すると、物体の中に眠っている女の子の顔が見えた。
ーー百合!
その瞬間辺り一面強い光に包まれた。
真っ白で何も見えない。