03 無双ラッシュ突入
今回の話は何の脈絡も無く始まります。後で伏線回収しますが、読み飛ばして貰っても影響ありません。
薄暗い荒野にいた。
また、夢の中にいるのだと、僕はすぐに理解した。
僕の周りには、フルプレートの鎧を着て、西洋風の剣を持った人達がたくさんいる。
視認出来るだけでも100人は越えているだろう。
兜の中から覗く目からは、明らかに僕に向けた憎しみの感情がうかがえる。
不意に僕は怒りに支配された。
いったい僕が何をしたというのか。
何故そんな目でみられないといけないのか。
手に力を入れると、僕の右手にも切れ味の悪そうな剣が握られていた。
許せない。
そんな目で、僕をみるな。
僕は目の前の男の元へ走ると、剣を両手で持ち、大きく振りかぶると全力で男の頭へ叩きつけた。
ベコンッ!!
男の頭は切れ味の悪い剣によって兜ごと汚く潰れた。
それを皮切りに僕を囲んでいた人達が一斉に押し寄せてくる。
「ぐわあぁぁぁぁぁあっ!!」
僕は叫びながら向かって来る者に対して剣をぶつける。
縦に、横にと本来の使い方とは違うであろう攻撃は、力で無理矢理周囲の者を次々と捩じ伏せる。
軽症、重症問わず切れ味の悪い剣のおかげで返り血を殆んど浴びずに済んでいる。
呼吸が荒くなる。振られる自分の手は見えているが、腕の感覚が鈍くなり、上手く動けているかわからなくなる。
倒れた人なのか地面の隆起なのか、バランスを崩しながらも転ばないように前へと進んでいく。
「ごふっ、ぁぁぁぁあっ!!」
むせながらも叫び続け、ただひたすらに周囲に怒りをぶつけていく。
「はあ、はあ、はあ」
気がつくと周りには立っている者は誰もいなくなっていた。
しばらく立ち尽くしていると、後ろから誰かに声をかけられた。
「終わったみたいね。どう、楽しかった?」
艶のある女性の声に振り返ると、そこには黒いロングヘアーの妙齢の綺麗な人が立っていた。
「どうかな、わかんない。けど、疲れた。」
とりとめもない返答をすると、その女性は目を細めて微笑んだ。
目、目鼻立ちがくっきりしていて、胸元の開いた黒いドレスのような服装のその人は、僕には魔女に見えた。
「じゃあ、帰りましょうか。」
「うん。」
僕は女性の後をついて歩き出した。