19 ビックマウスのファンタジスタ
草原には、たくさんの馬達が草を食べていた。
悪魔の馬らしきものは見当たらない。
「今のうちに、僕たちの戦闘スタイルを確認しようか。まずは僕から。僕は風魔法を自分に向けて使い、速度を上げてレイピアで戦う。」
そう言ってオナ禁さんはレイピアを抜き、2、3度素早く空を突いた。
カッコいい。噂に聞いていた通りだ。
「私はこれよ。」
そう言うと2本のダガーを取り出した。
ずっと大剣は何処に持っているのかと気になってはいたが、魔法か何かで出てくるのかもと自分を納得させていた。
「あれ?大剣を使うって聞いてたんですけど。」
「ああ、あれはイライラした時に使うの。普段は重いし、持ち歩いて無いわ。」
確かにマイさんは獣人だと噂で聞いたが、見た目は華奢だ。身のこなしで戦う方が向いていそうだ。
「そうなんですか。」
「次は、ダイ君の番だね。」
「僕ですか?僕は前に言った通り暗黒竜騎士で、戦闘スタイルは…」
僕は考えた。
いつもはネズミ狩りをしているが、その時は指ぱっちんして素手で首の骨を折るだけだ。
その前はオオカミを狩っていたが、サッカーキックでダメージを与え、最後に村長さんから貰った銅の剣で首チョンパしていた。
しかし、今日は何も持って来ていない。
「戦闘スタイルは、サッカーキックと指ぱっちんです。」
そう言って僕は、昔テレビで見たビックマウスさんの無回転フリーキックを意識して空間を蹴り、最後に指ぱっちんして笑顔で2人の方を見た。
「あんた、私をなめてるの?」
マイさんがダガーの剣先を僕に向けて来る。
「ひぃっ!!」
「落ち着きなよ、マイ。だいたいわかったよ。君はまだ戦闘スタイルが定まっていないんだね?」
「ははは。」
僕は愛想笑いをした。
「なんにせよ、まずは君のお手並み拝見と行こうか。期待しているよ。」
「任せて下さい。」
「それじゃあ今から日が完全に真上に来るまで時間をあげよう。それまでに手懐けられなかったら。わかるね?」
「もちろんです。」
今から正午まではおよそ3時間位だろうか。
「じゃあ君が助けてと言わない限り僕達は手を出さない。ここで見守っているよ。」
「はい。では行って参ります。」
僕は馬達が草を食べている方へ歩き出した。
はた迷惑な黒鹿毛を
退治せよとの命を受け
刀も持たずにいざ、参る!
ここが一番緊張する場面だ。
失敗したら、今までの苦労が全て水の泡となる。
しかし、パチンコをやらない人にはなんの事かまったくわからないだろう。
「あれ?なんで僕、パチンコの事なんか知ってるんだろう。」
どこか腑に落ちないが、賽は投げられた。
やるしかない。
パチンコわからない人、ごめんなさい。