協力
かなり遅くなりました。
申し訳ございません。
今回もお願いします。
待て待て待て、ヤバいことになった。
『やらないぞ!俺は絶対に!』
昼食も食べ終わり、5時間目の授業に入った時に、皇帝と押し問答を繰り返す。
『ええい!黙れ!我を誰だと心得ている!皇帝であるぞ!皇帝がトップで無くてどうする!この学校ではこの我に選ばれた陽大が生徒会長でなくてはならないのだ!』
なんという暴論。この問答がとにかく繰り返される。授業の内容なんて入ってこない。
『貴様、ここの校則は厳しいと思わないのか?それを変えたいとは思わないのか?』
言葉につまる。
確かにこの学校の校則は厳しい、学校指定のダサいカバンを必ず持ってこなくてはならなかったり、カーディガン色の指定であったり、挙句の果てにはメイクの禁止であったり。なんの為に存在しているのかを、生徒はおろか教員も説明できないものもある。
でも、それだけでは生徒会長をやる理由にはならないな。別にそんな不便してないし、学校指定のダサいカバン愛用してるし。
『そういえば陽大よ。お前の妹が今年この学校に入学したそうではないか』
そうなのである。俺の妹である天音は今年この学校に入学してきたのだ。
しかし、それが何か?
『お前の大切な妹が公共の場で好まれるメイクの仕方などをわからずに、この学校を出て良いのか?お前にとってはあまり縁のないものではあるが、メイクは社会に出たら必ず使うものであるぞ?妹が社会から疎まれても良いのか?』
こいつ、妹を引き合いに出しやがって。俺の弱点を正確についてきやがる。
『そんなのみんなが思っている。天音が在学中に誰かがやってくれるだろう』
そう、別に俺じゃ無くても良い。
『陽大よ。お前が言っていたではないか。この学校の生徒会は運動部の傀儡であると。そのような人間が、クソ真面目に業務など行えると思うか?』
思わない。全く。でもこのままじゃ生徒会に立候補しなくてはならない。
『安心せい。我は広大なローマ帝国を治めた皇帝である。学校などと言う小さな組織くらいまとめ上げるなど朝飯前である。我も手を尽くす。どうだやってみようと思わぬか?』
万策尽きた。何を言っても断りきれない。
『あー、分かったよ!やれば良いんだろ、やれば!』
こうなったらもうヤケだ。どうせ俺に人望や求心力はない。この皇帝がどこまで出来る人間なのか分からないが、どれだけ優秀であったとしても俺の知名度と求心力では勝つことはできないだろう。
『では、始めよう!この学舎を手中に入れる下準備を』
皇帝の宣言と共に5時間目終了のチャイムが鳴った。
「なあ、鈴原」
下校の準備をしている鈴原の前の席に座り、先程の話についての協力を頼もうと声をかけた。皇帝曰く、まず初めに協力者を集めることが肝心らしい。
実際、知名度も何もない俺が生徒会長になるなんて無理な話なので、学年で人気のある鈴原に協力を仰ごうと考えた。
「なんだ?」
鈴原は一度手を止めた。俺の雰囲気から長い話になることを察してくれたみたいだ。
「俺、生徒会長に立候補しようと思ってるんだけど、協力してくれないか?」
鈴原は目を見開き、何も言わない。鈴原の席の後ろを歩いていた大城さんも俺たちの話を聞いていたらしく、驚きを隠さずに立ち止まっていた。
「だ、大丈夫か?なんか変なものでも食ったか?」
ようやく口を開いたかと思えばコレである。
「いや、確かにガラでもないことをしているとは思っている。でも本気だよ」
俺の真剣な声とまっすぐな目で俺が本気であると思ってくれたみたいだ。実際は皇帝に無理やりやらされてるとは言えない。
「あの、なんで生徒会長に?」
後ろで聞いていた大城さんがもっともなことを聞いてきた。
「あー、校則厳しいだろ?それをなんとかしようと」
大城さんはそんなことだけで俺は動かないだろうと、よく俺のことをわかっているので不思議そうに首をかしげた。
「石川の妹って志望校ここなんだっけか。本当に妹のこと大好きだよな」
何か勘違いされそうなことを言われたが、誤魔化せるならそれでいい。とにかく鈴原の話に乗っかる。
「まぁ、そんなとこだ。家族だし、大切に思うのは普通のことだろ」
うん、うまく誤魔化せたな。大城さんも納得したように頷いた。
「私、手伝うよ。石川君が生徒会長になれるように」
大城さんはそう笑いかけた。
「まったく、大城さんが手伝うってなったら、俺も一肌脱ぐしかないか!」
鈴原も腕を捲るような仕草をして、申し出を受けてくれることとなった。
「ありがとう」
俺は精一杯の感謝と皇帝のわがままに付き合わせる申し訳なさから頭を全力で下げた。
ありがとうございました!
次回もお願いします!