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一話 皇帝参上!

読んでいただきありがとうございます!

感想等々も、是非お願いします!

 授業が終わり、職員室でカトセンに長い時間怒られてしまった。

 それが終わった頃には昼休みはすでに半分終わっていた。

 教室に戻り、昼食をとるためにカバンから弁当を取り出す。

「石川くん、本当に大丈夫?」

 後ろの席で昼食をとっている大城さんが心配そうに声をかけてきた。

「あぁ、寝たらずいぶんマシになったよ」

 少し安心したように表情を緩めたが、すぐにいつもの真面目な顔に戻った。

「今回はしょうがないけど、授業中に寝たらダメだよ」

 真面目な大城さんから注意を受けてしまった。

「次からは気をつけるよ」



 大城さんと話すのを切り上げて、昼休みには人が来ることがあまり無いグラウンド近くの中庭で昼食をとる。

 いつもなら鈴原と他の友人に誘われて、学食で弁当を広げて食べるという迷惑極まりない行為をしているが、今日は俺が怒られていたため、鈴原達は先に行ってしまった。なので静かにひとりで昼食をとる。

『ふむ、やっと落ち着いたか』

 誰かに話しかけられたので中庭を見渡すも、あたりには誰もいない。

『先程は驚かせたな、謝ろう』

 その声は、こちらの事情を気にも留めずに言葉を続ける。

「え、誰?どこ?」

 あまりの困惑に声がでてしまう。

『見えないというのは仕方あるまい。我は実態を持っておらぬのでな。今も貴様の胸のうちに語りかけておる。』

 胸のうちって、そんな幽霊じゃあるまいし。

 俺は立ち上がり辺りを歩きまわり人を探す。しかし誰もいない。

 スマホでラジオでも聞いてたんだな、きっと。いや、そうに違いない。

 そう思いスマホを開くも、ラジオどころか、優等生の俺はしっかりとマナーモードのうえに消音モードという、音の出る余地の無い状態になっていた。

「え、どういう」

 流石に怖くなってきた。中庭やその周辺に人はいないし、スマホから何か音が出てた訳でもない。

 じゃあこの声は本当に。

『だから言っておるであろう。我は実態を持たぬ、言わば幽霊である』

 これマジなヤツってことでいいのか?

 体から嫌な汗が流れ始め、肌着を湿らせる。

 こういう時はどうするんだ?とりあえず、お経唱えれば良いかな?

 俺は見よう見まねでお経を唱え始める。

『何をしておる?我を除霊するのにそれは意味が無いぞ。我はローマ皇帝であるからな。宗教が違う』

 宗教は確かにデリケートな問題だもんな。完全に俺が悪い。

「すいません」

『うむ、異文化交流というのは難しいものだ。許そう。我は寛容な皇帝であるからな』

 それは良かった。国の元首に無礼があってはいけないからな。

「って、ローマ皇帝⁉︎」

 ということはイタリア旅行の時からずっと憑いていたということ?

『うむ。そうである。我はローマ皇帝である』

 そんなバカな。頭を抱えて座り込む。

 少しの間そうしていたが、昼休み終了のチャイムが響き、急いで昼食を片付けて教室に走った。

 とりあえず、この状況を受け入れるしかなさそうだ。




 6限目までの授業が終わり、帰宅の準備をする。

 この2時間は話しかけられることは無かった。

『ふむ、やっと授業が終わったか』

 唐突に頭の中に声が響いた。

「うわっ」

 驚きのあまり声が出てしまった。

「どうしたの?石川くん」

「いや、なんでもない。消しカスが虫に見えて驚いただけ」

 なかなか苦しい言い訳であるが、机の上を払いながら言うことで誤魔化す。

「そう。石川くんってしっかりしてる人だと思ってたけど、意外とおっちょこちょいなんだね」

 石川さんは少しだけ、笑みを浮かべた。

「アハハ、意外とそうなのかもな」

 不自然に笑って誤魔化す。いや、不自然なのかい。

「じゃあ、また明日ね。石川くん」

「あぁ、また明日」

 大城さんは少しだけ言葉を交わすと、帰った。

 俺も帰ろう。

 教科書類を全てカバンに詰め込み、帰路につく。



『また、驚かしてしまったな』

 下校中に、また頭の中で声が響いた。

 辺りを見渡し誰もいないことを確認してから、声の主へ向かって返事を返す。

「急に話しかけないでくれ。心臓に悪いし、言葉を返せない」

 顔も見せない幽霊に向かってクレームをつける

『ふむ、心臓に悪いとかはよく知らんが、声に出さずとも会話はできるぞ』

 知っといてくれ。

「で、その声に出さない会話って?」

 前半部分は俺の寛大な心で聞かなかったことにして、後半のことについてはとても気になる。

『簡単なことよ、そのためにお前の体力を使って、言葉がつながるようにしたのだからな』

 じゃあ、最近体が重かったのはコイツのせいだったのか。

 まぁ、これは後で問いただすとして、今は念話の方だ。

『では、我に対した言葉を届けようと思って、言葉を胸のうちに思い浮かべると良い』

 そんなことで良いのか。

 じゃあ、

『お蕎麦美味しい』

 っと。

『ふむ、その蕎麦というものは知らぬがそんなに美味なものであるのか』

 おぉ、本当にできるんだ。

 これなら独り言を呟いている変人に思われなくて済む。

 まず、皇帝と名乗る幽霊に取り憑かれてる時点で俺の中の何かがおかしいのだろうけど。

『すげーな、これ』

『当たり前であろう、我をなんだと心得ている、皇帝であるぞ』

 皇帝と念話になんの関係があるのかは知らないが、まぁ良い。

『さて、聞いてないことがあったな』

 はて、なんのことやら。そんなに長い付き合いになるとは思わないが耳を傾ける。

『貴様の名はなんだ』

『名前って、それなりの時間取り憑いていたんだから、知ってるんじゃないのか?』

 今更聞くものでもないだろう。

『無論知っている。だが、これから長い付き合いになるのだ。名前は名乗ってもらえるくらいの信頼はしてもらいたいものだな』

 あ、長居するつもりなのね。

 まぁ、別に減るものでもないし、確かに名前を名乗ってすらいない相手に名前を呼ばれるのは気持ちが悪い。

石川陽大いしかわはるただ』

『ふむ、では陽大と呼ばせてもらおう。我のことは敬意を込めて皇帝と呼ぶと良い』

 なんと、人のことは下の名前で呼び捨てのくせに、自分は敬意を込めろとはなんと図々しい。が、何されるか分からないのでそう呼ばさせてもらおう。

『はいはい、分かったよ。皇帝さん』

『うむ、これで何話もできたし、名前もしれたのでな、授業とやらの間も退屈しなくて済むな』

 いや、授業中くらい静かにしてくれ。

『授業は邪魔しないでくれよ』

『フッ、高等学校などと言うから、どれほど高度な研究をしてるかと思えば、あのようなつまらん常識、基本ばかり、これなら2000年前の教育の方が進んでるようなものよ』

 俺のささやかなお願いが一蹴されるどころか、2000年以上前の人間に現在の教育が否定された。

『そういうのは、大学に行ってからやるんだよ』

 現代人としてのプライドに少しだけ火がついたので、反論をする。

『早ければ早いほど良いであろう。そのうえにそのような基礎は義務教育のやらの時に終わらせるものではないのかね?』

 何も返せない。確かにそう思う。本当に必要な知識は義務教育のうちに全部やるべきだと思う。

 ていうか、皇帝って日本に来て5日ってところだろ?もう、日本の教育制度とか分かっちゃってんの?

『よく義務教育なんて知ってたな』

 疑問に思ったので聞いてみる。

『加藤とやらが言っていたではないか、義務教育じゃないんだから、うんぬんと』

 意外と話しを聞いてたんだな。

 偉そうなだけじゃなくて頭が良いし、話も注意深く聞いている、ということを知って少し見直した。

 しかし、これから俺の学校生活どうなってしまうのか、という先の見えない不安に襲われ、ため息をついた。

『ため息をつくと幸せが逃げるぞ』

 誰のせいなんだか。



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