表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

輪廻

作者: 小鳥遊未来

pixivにも別名義で掲載しています。

別名義ですが、同一人物です。

決してパクリではありません!!


あの冬の日、最愛の人を失った。


「陽子はいつもそうやって私の隣で笑ってくれる。それだけで私は救われる」


そういう彼女はもうほとんど動かない表情筋をわずかに動かし、私に向かってほほ笑む。


「春香......もう無理しないで。横になってて。お願い......」


「いいの。私はもう長くはないの。少しでも陽子と話していたいの」


彼女が患っているのは治療が見込めない難病。余命半年。彼女はそれを私だけに教えてくれた。


「私ね。陽子が好きだった。羨ましかった。優しく、思いやりがあって、クラスのみんなの人気者である陽子。でも今だけは独占したい。みんなの陽子は今だけ私もの」


そんな衰弱した姿で言われた思いがけない独占欲。私は困りはてた表情をして、どうしていいか分からず黙っていると春香がさらに畳みかけてくる。


「だからお願い。私の最後のお願いとして亡くなるまで傍にいて欲しい」


今は高校3年の最後の学期の真っ最中だ。これから受験という大切な時期を控えている。でも春香の最後の願い聞き届けたい。今まで尽くしてくれた彼女の為に、最後の最後、こちらも願いを叶えてあげたい。


「うん。ずっと傍にいる」


熱き決意を秘めた声で言うと、春香は安心したかのように目を閉じた。


それを境に春香は二度と目を開かなかった。

季節は冬。寒波吹き荒れる外の世界とは対照にその病室は暖かな空気に包まれていた。




あの冬の寒波吹き荒れる中、春香は亡くなった。


私は静かに眠る春香を前に、ただそのベットの横で突っ立ていた。

涙は出なかった。

波が引いたかのような穏やかな気持ちでいられた。

人間は死を前にすると泣くものだと思っていた。それが最愛の人なら尚更。

でも違った。本当に最愛の人の死を前にすると逆に心が穏やかでいられた。

春香の静かなる横画を見て私は寂しくもうれしい気持ちになった。

春香は幸せのまま亡くなったのだ。

私が泣いてどうする。

春香のために私も幸せにならなきゃ。


「ありがとう春香。今まで本当にありがとう。私のこと好きになってくれて。春香はいろんなものを私に与えてくれた。だからわたしは......」


その言葉を言い終える前に、主治医と数人の看護師が病室に雪崩れ込んできた。


彼らを横目に私は春香から視線をそれ逸らさなかった。




10年後




「陽子」


「あなた」


もうすぐ出産を迎える私を夫は優しく声をかけてきた。


「もうすぐだな」


「ええ、もうすぐね。わたしね。感じるの。この新しい命が私に新たな希望を与えてくれるって」


ちょっと嬉しそうにいうとすかさず夫がすねた声色を出す。


「おいおい。わたしじゃないだろう。わたしたちだろう。この命は俺たちの新たな希望なんだ」


ちょっとした言葉の違いを気にするこの人は本当に可愛い人。


「もちろんよ。でもこの命は特別。そういう予感がする。私に新たなる生きがいを与えてくれる予感がね」


そう楽しそうに喋っていると、夫も次第に調子を合わせてくる。


「ああ、新たなる命。きっと陽子に更なる幸福をあたえてくれる。だから、おまえもちゃんと元気にうまれるのだぞ」


夫はお腹の中の赤ちゃんに優しくもうれしそうに話しかける。


もうすぐだ。

もうすぐあなたに会えるのね。

そうでしょ、春香。


季節は春。新しい生命が芽吹く季節。

読んでくれてありがとうございます。

批評、批判、嬉しいコメント。全て受け付けてます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ