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ティアリーナ 8歳 戦闘の快感2

 ジクーロイドが再び剣を振って、ティアリーナと打ち合いを始める。


「これはどうだ!!」


 ジクーロイドが渾身の力を込めた、全力の踏み込みだ。

ティアリーナに剣で刺突の雨を浴びせる。


「やるわね! 私も~」(身体加速四倍!)


 ティアリーナがジクーロイドの動きを真似する。

 更なるスピードで剣を驟雨のように刺突する。

 しかし、さっきと違う。ジクーロイドも同じ速度に上げる。

 二人の間に、無数なる剣の気流を交えている。


 アラウドを含める全員が、この信じられない光景に呆然としてしまう。

 戦っている二人にとって、勝負のことは頭にない。今はただ戦闘を楽しんでいるだけだ。


 太陽の光がだんだんと薄くなった。その代わりに綺麗な月が昇っていた。

 二人の戦闘は既に3時間も続いた。

 周りの人が二人の強さに震撼されてしまい、ずっと二人を注視している。


「そろそろ勝負を決着するぜ!」

「いいの~? せっかく楽しいのに~ いいよ~」


 二人が同時に剣を収め、後ろへ飛ぶ。

 ジクーロイドの全身がオーラに覆われている。

 渾身の力で空にジャンプした。


「剣技・鳳凰衝フェニックスインパクト!」


 ジクーロイドは全身のオーラが燃えて、炎を纏い地上にいるティアリーナへ突進する。


「これ! 最高じゃないかしら!」

 ジクーロイドの剣技に向けて、ティアリーナは僅かな恐怖も感じられない。心臓にドキドキな躍動の声しか聞こえない。

(これが実戦の感覚だ! 魔術マジックはこれと全然比べ物にならない!)


 ティアリーナは興奮している。対面の剣技が火属性を含むことさえ気付かなかった。

(身体加速四倍! 身体強化四倍!)

 全身に覆われているオーラが剣に集中する瞬間。

 空に華麗な髪飾りのような美しい弦月がティアリーナの視界に入った。

(この世界に、こんな美しいものがあるのか~)


「剣技・月華天昇ムーンヒメルファールト


 ティアリーナが剣を突進しているジクーロイドに向けて、剣を半円の形で振る。

 白いオーラが弦月の如く、空に斬っていく。


 二人の剣技がぶつかった瞬間に、爆風が起こった。

 訓練場に近い建物が倒されてしまった。

 先日、ティアリーナに斬られた木が根こそぎにされた。


 爆風がやっと止まった。

 周りに散り乱れてしまった。

 張本人の二人がさっきの衝撃で地面にへたり込んでいた。


「凄い! オレと互角にできる人は、君が初めてだ! 好きだ! オレと一緒になれ!」

「結構です!」


 ジクーロイドはビックリした。第三皇子のプロポーズに対して、即座に断る女性がいるなんて、全く思わなかった。

 しかし、この物凄い強さを持つ女の子に対して、王族としての誇りを置いた。


「何故オレがダメなんだ!? 理由をちゃんと言わないと、済まさないぞ!」

「私よりも弱い男には興味がありませんわ!」

「もしオレが君に勝ったなら、オレのお嫁さんになるのか?」

「その話は、ジクーロイド様が本当に勝ったら、話しましょう~」


 今のティアリーナは、まださっきの快感に浸っているので、プロポーズに対して、まだ何も考えていなかった。

 しかし、ジクーロイドは既に規格外な伯爵令嬢に惚れた。


「オレをジクと呼んでいいぜ! その代わり、君をティアと呼ぶ!」

「さっき燃えた炎は何ですか? 教えてくれたなら、そう呼びますよ!」


 冷静を取り戻したティアリーナは、やっとさっきの火属性攻撃に気付いた。


「そんなことは簡単だ! オレの剣には精霊の力が宿っているからな。

「精霊……?」

「知らないのか? 精霊とはね……」


 精霊——— 太古の時代から自然に存在するもの。

 自然界の万物に存在している。

 精霊は火、水、土、風、雷、氷、光、闇という八つの属性に分けられている。

 精霊の力がたまに鉱石に宿ることがあり、その鉱石で作られた武器は精霊武具と呼ばれる。

 しかし、精霊武具は極希少である。帝国にさえも一本しかなかった。


「わかりました。ありがとう、ジク様~」

「それじゃ、よろしくな! ティア!」


 これが、二人の出会いだ。

 二人で壊された騎士団を元に修復したのは、十日後のことだ。


 騎士団訓練場———

 ティアリーナとジクーロイドが剣で打ち合っている。

 二人の間に、無数なる剣の気刃を交えて、周りへ飛び出した。

 騎士たちは既に建物の後ろに避けていた。


「ジク様! あれから毎日、私に挑む何て、王族としての教育は大丈夫かしら?」

「大丈夫だよ! ティア! オレは今、もっと大事なことをやっているさ!」


 …………

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