ティアリーナ 0歳
神々に許されない禁術で、3016年前の時代に逆流していた。
神統歴233年———
ジルニック帝国帝都・バルニクス———
「オギャー」という泣き声が響いた。
帝国騎士団団長——— アラウド=フランクス伯爵の家に、歴史の流れを転覆する命が誕生した。
(ここは…… どこ?)
(私の手が…… こんなに小さいか? まるで生まれたばかりの赤ん坊のようだ)
赤ちゃんが周りを見て、知らないものがたくさんだ。
石で作った暖炉の中に、火が燃えている。周りの家具も全部見たことのないデザインだ。
(天井が…… 木で作ったか? 私の時代と全く違う。思い出した! ここは過去だ!)
アルフレッドが思い出した、自分は既に世界樹様の力で3000年前の時代に転生した。
「あなた~ ティアリーナちゃんが目覚めたよ!」
(ティアリーナ? 私なのか?)
優しい女性の声が聞こえた。細長い手が現れて、赤ちゃんを抱き上げられた。
(この柔らかい感覚は…… 女性の胸!? 哺乳のつもりか!!)
未来で大賢者と呼ばれていたアルフレッドは、目の前にいる女性の動きに驚いた。目を閉じて、顔を横になった。
「あら、ティアリーナちゃんが照れているよね~ 大丈夫よ~ ここはお父さんとお母さんしかないよ~」
人間の男女二人がアルフレッドの視界に入っている。ごつい顔で、髭が濃い男性。そして、青空のようなツルツル髪を伸ばしている女性だった。
「ティアリーナちゃん~ お父さんだよ~ お母さんとそっくり美人だ~ 早く生き生きと成長しろよ~」
(美人だと!?)
アルフレッドが嫌な予感が急に生じる。全身の触感で確かめる。
(体の何処かに、何かをなくなったようだ!!間違いない! 私は人間の女になってしまった!!!)
アルフレッドの驚きは、「オギャー」という泣き声に変わっていた。
…………
(どうして私は女になってしまったのか? でも、これは大事なことではない)
この僅かな瞬間、アルフレッド自身も気付かなかった。ティアリーナという女の子になった事実を受け入れた。
ティアリーナにとって、重要なのは、早く成長して、世界樹様を助けることだ!
未来で大賢者と呼ばれていたティアリーナは、自分の力を確認している。
精神——— 万物の根源そのもの。
世の中に存在しているすべてのものが精神を持っている。
ティアリーナがはっきりと感じている。果てしない海のような精神がまだ体の中に鼓動している。
魔素——— 魔術の根源である。
魔素が大気の中に存在している。属性によって、火、水、土、風、雷、氷、光、闇、無という九つの種類に分けられている。
体にいる精神と大気にいる魔素と組み合わせる。生成したエネルギーは、魔術である。
つまり、魔術の強さは精神の大きさに決められていることである。
未来で世界を統治していた覇王ジルウェートより膨大な精神こそ、大賢者と呼ばれる理由である。
(ない!!! ない!!!)
ティアリーナが驚愕な表情が露わになった。
空気の中に、僅かな魔素でも感じられない。
魔素がないなら、ティアリーナの魔術は全部使えない。
ティアリーナが何かを思い出したように、冷静を取り戻した。
(唯一の魔素と関係ない属性。無属性は使えるか?)
気——— 人と動物の体に存在するものである。
人の体が、皮膚、筋肉、血、骨などの器官で組み合わせている。数多い器官の中に気が存在している。
精神と魔素の関係と同じ。
精神が気と組み合わせる。生じた生命エネルギーは、オーラである。
精神で気を強化するのは——— 無属性の魔術であった。
無属性を使った人は、ほとんど戦士系であった。しかし、戦士系の精神が少ないため。せいぜい基本の筋肉強化程度だった。
(私の精神なら、どれほどに強化できるか? 試して見よう!)
ティアリーナが隣に深く眠っている両親を確認した。
(今なら、誰でも気づかない! 精神と気を融合して、筋肉を強化する!)
横にしている彼女が、急に両足で立ち上がった。
(次は、オーラの大きさを確かめる。気を皮膚の外に放つ! はぁぁ!)
真っ暗な夜に、瞬間にお昼のように輝いている。
(これが…… 私のオーラか?)
まだ赤ちゃんのティアリーナの顔に自信の笑みに表した。
(この力があれば。絶対に世界樹様を救出できる!)
「何! この光!」
この異常な光によって、伯爵夫人が驚いて目を覚ました。
(母さんが目覚めちゃった! ストップ!)
ティアリーナが気の放出を切断した。光が瞬間に消えた。
「メアリー。どうしたか…… !」
伯爵が奥さんの声を聞いて、目を覚ました。
立っている娘の姿を見て、顔に驚きが露になった。ひょいと娘を抱き上げる
「ティアリーナちゃんが! ティアリーナちゃんが! 自分で立ち上がったぞう!!」
(不味い! 身体強化のことを忘れちゃった!)
「はっはっはっ! さすがオレの娘だ! いいぞう! ティアリーナちゃん、高い高い~~」
「あなた。おやめなさい! ティアリーナちゃんが怖がってしまいます!」
(この感覚は家族なの… か?)
ティアリーナは既に失ってしまった感情が取り戻したように、数百年ぶりの微笑みに現した。
「ほら! ティアリーナちゃんが笑ってるぜ!」
「あぁ~ 本当ですわね~ でも、危ないだから! 早く降りなさい!」
…………
(世界樹様。すべては貴方様のご意志なのか? すべてを失ってしまった私を、人としての感情を取り戻すためか?)
(貴方様のご意志に感謝する。私はこのままに、人間の女性として、失ったものを取り戻す。
そして、約束した通り、きっと貴方様を救える……)
また赤ちゃんのティアリーナが、考えただけで夢に誘われていた。
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