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眠れる子獅子亭


「今度、機会があればね」


「やったのです!」


 流石に彼女の要望を叶えるために街のど真ん中、しかも夕飯時にマナの枯渇を引き起こすわけにはいかない。

 

「じゃあ、今度こそ宿を探そう」


 リアとモモは素直に頷いて、僕達は宿場町のように中級の宿を探して街をさまよった。そうすることおよそ10分ほど、いい塩梅の宿を探し当て、カウンターへと近づく。カウンターには受付専用の女の人が立っており、僕達が入ると笑顔で出迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませー、眠れる子獅子亭へようこそ!」


「……えっ? 今なんて言いました?」


「ですから、眠れる子獅子亭ですよ、お客さん」


 物凄い既視感を覚えた僕は、念の為に訊ねる事にした。

 

「あの、もしかしてジョスさんをご存知ですか?」


 すると女の人の反応は予想以上だった。

 

「まあまあ! あなたジョスおじさんのお知り合いなんですか!? 元気にしてました!?」


 カウンターから身を乗り出す勢いの彼女に、僕は腰が引けながらも応対する。

 

「え、ええ。今は王都で眠れるにゃんこ亭という宿屋を経営していますよ」


「そうなんですか……あのジョスおじさんが……。メイヤさんやマールも元気にしてますか?」


「ええ、特にマールさんは元気過ぎるくらいで……」


 彼女の奇行の数々を思い出して若干懐かしさを覚えるのは、まだちょっと早すぎるかな?


「あの女、マサヤに色目を使うのよ!!」


 物思いに気を取られていると、リアが憤慨した様子で告げ口をする。


「リア、余計な事言わないで……」


「あはは、マールらしいわね。大方お兄さんがマールの事手助けしてあげたりしたんじゃない? あの子惚れっぽいから」


「よく解りますね……」


「だって従姉妹だもの、そりゃ解るわよ」


「えっ!?」


 よくよくみると、確かにマールさんに似ていなくもない。

 

「ミイ、お客さんなのかい!?」


 よく通る女性の声が、カウンターの奥から響いてきた。

 

「お母さん! ジョスおじさんのお知り合いが来てるの!」


「なんだって! あの弱虫ジョスの知り合いだって!?」


 どすどすと足音を鳴らして現れたのは、ミイと呼ばれた受付の人をそのまま横に大きくしたような女性だった。

 

「おっきいのです!」


「こら、モモ!」


 慌ててモモの口をリアが塞ぐが時既に遅し。ギロリ、と眼光鋭くモモを見つめていたかと思うと……。

 

「あはははは! そんな直球で言われたのは久しぶりだねえ、前の男は腕をへし折ってやったけど!」


 笑っていた。どうやらモモは子供ということで許してもらえたらしい。

 

「どうも、ウチの子が失礼をしまして」


「いいさいいさ、子供なんだからしょうがないよ。それで、ジョスから伝言でもあるのかい?」


 片目を閉じてウィンクをしてくる彼女に、僕は年に似合わず様になっているな、等と失礼な事を考えながら否定した。

 

「いえ、ここには本当に偶然入っただけでして。まさかジョスさんの親戚の宿屋とは思いませんでした」


「そうかい、これも創造の神様のお導きかねえ。ジョスの知り合いだっていうんなら、特別に値引いてやろうじゃないか!」


 剛毅ごうきな女将さん(恐らくはそうだろう)の言葉に、僕達は恐縮してしまう。

 

「そんな、悪いですよ!」


「いいさ、その代わり、後でジョスの話しを聞かせてくれないかい? アイツったら、家を飛び出して行ったきり手紙一つ寄越しやしないんだから」


「あー……まあ、そういう事でしたら」


 ミイさんが、ニコリと微笑んでもう一度繰り返した。

 

「それでは改めまして、ようこそ眠れる子獅子亭へ!」


次回は13時更新です

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