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その日、異世界に出会う

創作へ少しでも触れようと新作投稿。例によって不定期更新でなろうの肥やしになると思います


我が居城のトイレが異世界に繋がったんだけど。


この短文をSNSにツイートした男は、眼前に広がる光景に絶句した。

絶句しながらもスマホを素早くタップする様はどこか滑稽だ。


「確かに我輩、消臭剤はすみきった森の香りにしていたが……トイレを開けたら異世界の森に繋がるとか意味わからん、なのである」


男の眼前に広がっていたのは、鬱蒼と生い茂る樹々。否、森であった。

少し薄暗いが、少し視線を動かせば陽向も見える。

見たところ普通の森であった。……都心のトイレから繋がっていなければ、だが。


「ふぅむ……我輩の魔法のせいで異世界へ繋がったのであるか?否、ここ二週間我輩は工作室でプラモってた身。魔法なぞ使う暇は無かったのである。となると……やはりこれは外的要因によるものであるな」


一度パタン、とトイレの扉を閉めてもう一度開いても、森は広がったままだった。


「誰だか知らんが我輩のトイレを消してしまうとはけしからんのだ。……仕方ない、一階のトイレを使うとするのだ」

男はため息混じりにトイレの扉を閉めると、足早に階段を降りて行った。元々用を足すためにトイレへ行っていたからだ。



………



「誰がやったか知らんがマジ許せんのである!!」


一階も同じく森へ繋がっていたようだ。




「コンビニが徒歩二分で助かったのである。……さて、どうするものであるか」

コンビニで買ってきた大盛りガーリックペペロンチーノ(ウィンナー入り)を一口咀嚼しながら男は思考する。


都心新築二階建て駅近4LDKのこの物件、結構な額で一括購入してからまだ二年しか経っていないが、住み心地良く購入額以上の満足感を覚えていた。

が、やはりトイレが無いと言うのは問題だ。気軽に用を足せないのは地味なストレスになる。せめて一階か二階、どちらかのトイレは使用できるようにしたい。


「問題は、森トイレが我輩の知る魔法以外の魔法で作用している点なのだ」

こめかみを人差し指で軽くつつきながらため息を漏らす。

紙パックのトマトジュースを一口含んで飲み下し、またペペロンチーノをフォークに絡めて口に入れる。


「この、数千年を生きる我輩ですら知らない魔法とか弩マイナーなのか全く違う論理体系の魔法であるかの二択……異世界である辺り後者なのだ」


大盛りのペペロンチーノをたったの五口で食べ終わった男は次に、焼きうどんのビニールパッケージを引き裂いた。


「やはり……今流行りの異世界転移物をするしかないのである」

紅生姜を絡めつつ焼きうどんをすすり、咀嚼する。それを繰り返すこと三度で焼きうどんは完食された。


「いやー、困っちゃうのである。異世界転移で無双とかちょっと憧れていたのである。何せこの時代、ちょっと暴れようものならネットで世界中に知られてしまうのだ。その点異世界ならどんだけ暴れようと無問題。久しぶりに思う存分暴れてストレス発散とかしたいのである」


コンビニの白い袋からデザートのシュークリームを取り出した男は包装を破ると一口でそれを食べてしまった。


「むふふふ。やはりコンビニのシュークリームは安っぽくもその分大量に詰め込まれたクリームの暴力感が堪らないのである……!そうだ、異世界行くならやっぱりあの格好でないといかんのである」

口元についたクリームを嘗めとると、男は二階にある寝室のクローゼットへ向かった。


「うむ、虫食われはないのであるな」

取り出したるは黒のタキシードに襟の立った裏地が赤の黒のマント。


吸血鬼・・・たるもの、やはりこの格好でないと笑われてしまうのである」

男がハンガーに吊るされたタキシードとマントをハンガーから外すと、それらは黒い煙となり、次の瞬間、寝間着姿だった男の格好はタキシードとマントを羽織った姿へと変わっていた。


「あとはポマードポマード……ふふん」

一階の洗面台で髪をオールバックにした男は不適に笑う。


「レディパーフェクト……なんちゃって、なのだ」

バサッ、と黒マントを広げつつ鏡に決めポーズを決めた男は鼻歌混じりにトイレへと向かう。


「さあ異世界よ!我輩、ヴライド=テーペス=ドラキリアにひれ伏すのである!!ムハハハハッ!!」

バァン!!と勢い良くトイレの扉を開きながら高らかに宣言した男だったが、


「ハハハハ……は?」

「ふぇ?」

自分を見上げる幼女の姿に勢いは削がれて行った 。


「……何者である?」

「あたし、メリアナ!ごさい!」

「おー、自己紹介できて偉いのである」




これは、現代日本に生きる伝説の吸血鬼ヴライド=テーペス=ドラキリアによる、異世界侵略記!!


「親御さんはいらっしゃるのであるか?」

「うん!ママとパパとおねえちゃんとピクニックに来たの」

「それは楽しそうである。……その三人はどこにいるのであるか?」

「ママもパパもおねえちゃんも、まいごになっちゃったの!」


異世界侵略記!!

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