忘れてました。うっかり・・・
指が・・・思ったように運んでくれません。
誰か思考読取装置の開発プリーズ・・・
すっかり忘れていましたが、街道沿いに休憩所を設けるという計画がありました。予算案を見ていて思い出したので、早速現地見学です。馬車や徒歩で行く人達が、それぞれに丁度いい場所を選ばなければいけません。当然ですが、こちらの領内です。ゼノアからは誰かに任せればと言われましたが、そんな事で私を縛り付けられると思ったのでしょうか?
「領境からは、徒歩で小一時間程が目安ですね。場所としてはこの辺が好ましいのですが・・・」
護衛にラウールともう一人、最近腕を上げたと評判の兵士を連れて来ました。何処かで見た顔なんですが、気のせいでしょうか?うーん、思い出せませんね。元王女という都合上、人の顔を覚えるのは得意なんですけど・・・。
「案外バレないものだな・・・」
僕はガリウス子爵家三男、イアン。アダムス侯爵の分家筋で、その前侯爵からマーネイン子爵領への潜入を依頼された。父さんが前侯爵の娘婿で、色々と世話になっているからと断れなかったんだとか。
急成長の秘密を探り、可能であれば自領にも取り入れる考えなんだろうけど、これを真似出来るとは思えない。
民に学をつけ、成績次第では領の運営に関わらせる?しかも税が他領と比べて格段に安く、領民の生活水準は右肩上がりだ。見方によっては、叛意有りと思われても仕方ない。
潜入については、あっさりすぎる程に上手くいった。募集されていた自警団に入って、あれよあれよという間に出世してしまった。元々国軍の所属だから、体を動かす事は嫌いでもなかったし。
「っていうか、あの人強すぎ・・・」
同行している人に目を向けると、盗賊のような目線であちらこちらを見ている。子爵の話では、そのものだったらしいけど。
いや、元盗賊にしては異常に体捌きが上手い。短剣使いらしいけど、長剣でもそこらの新兵には太刀打ち出来ないだろう、と思う。二回程強盗の襲撃があったものの、どちらもほぼ一人で片付けてしまっていた。どうやら他領から流れ込んで来た類の連中らしいけど、それなりの強さはあったし、数も圧倒的に多かった。
「さて、どう報告したものやら・・・」
賊の片付けをしつつ、一人ごちる。定期的な報告をしないと、侯爵は絶対にやって来る。今でこそ好々爺然としているけれど、まだ現役じゃー、とか叫んでるし。周りはあの姿に騙されてるんだよな・・・。
おおまかな選定は終えましたが、問題は予算です。資金としては十分なんですが、書類が面倒なんですよねぇ・・・。誰か代わりに書いてくれないでしょうか?国としても役立ちますし、お姉様か国王を騙・・・もとい説得すればどうにかしてくれないでしょうか?
「王妃様が見えておられます。一度応接室へお通ししましたが、こちらへご案内しましょうか?」
・・・良い所にお誂え向きの人が!国王は王妃様に頭が上がらないですから、こっちを攻めれば陥落間違いなしです。
「ふーん、街道沿いへの宿場建造、ね・・・。確かに現状では徒歩の行商人や住民もいるし、悪くない案だと思うわ。でも、ねえ?」
冷たい目で私を見てくる王妃様。あ、これ駄目なやつです。
「こ・れ・を、国でやらせようと小狡い事を考える、あなたの頭が心配だわー。各領地で一斉に実行させるなら、王命とした方が良いんでしょうけど。ディアは一体、何をどうすればこんな成長をするのかしら?」
「いひゃい、いひゃいれすぅ・・・。にょひていあいあう、おうひああぁ〜」
思いっきり頬っぺを抓られました、しかも両側です。バレてました・・・?
「あなたなら、私にも秘密にしてこっそりやっていたでしょう?それを計画段階で見せてくる時点で、怪しいと思いますよ。大方、予算資料を書くのが面倒とか、そんな理由でしょう。何処をどう間違って、こんな風になったんだか・・・」
溜め息を吐きながら、王妃様は書類に目を通していきます。なんだかんだ言いながら、結局は付き合ってくださるんですよね?ついでに宰相と国王の説得にも協力してくれないでしょうか。




