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国王一家と。全部話しました。

 その後も何人か、お父様の部下や上司、他部署の方とお会いし、挨拶を交わしました。何名か私を見る目が怖かったのですが、何故でしょうか?その度にお父様の、手を繋ぐ力が強くなりましたし。んー、考えても分からないです。

「あいつら・・・休暇明けは徹底的に訓練だな」

 お父様がボソッと呟きました。よく分からないですが、頑張ってください!


 他にも幾つか、資料室や訓練所を見せていただき、そろそろかなー、などと考えていた時でした。お父様が帰ろうかと提案してきたのですが・・・。

「こちらでしたか、マーネイン伯爵。国王様がお呼びです、至急謁見の間へお越しください」

 待ってました!この為にわざわざ興味の無い部屋を訪ね、顔と名前を覚えてもらったのです。中には、前世でよく出入りした部屋もありましたし。

 呼びに来た兵とお父様の三人で、謁見の間へ向かいます。んー、確かこっちだったと思うんですが。え、逆?あら、そんな所に通路があったのですね。十五年も生活していたのに、全く知りませんでした。


 お父様に手を引かれ、長い廊下を歩きます。途中で見えた中庭では、上姉様が優雅にお茶を飲んでおられます。この姿では私が妹だなどと、考えないでしょうね。心の中で一礼し、その場を通り過ぎました。

(お姉様、どうかお幸せに)

 とてもお優しかった姉様方。一年の大半をベッドで過ごす私にも変わらない態度で接してくださり、色々なお話をしてくださいました。夜会で知り合った殿方の事から始まり、市井で耳にした噂話等・・・。一度お話をして、今までのお礼をしたかったものですが。それも今では叶わぬ夢、大人しく胸にしまっておきましょう。


 窓の無い廊下の先に、両開き扉が見えてきました。あれが謁見の間、国王陛下が面会をする時にのみ使われる場所です。覚えている限り、私は一度も入った事がありませんが。ここまで予定通り、後は私が上手く演じられるかにかかっています。ディアンサ・クロード・マーネイン、渾身の大芝居(さるしばい)です!

「陛下、マーネイン伯爵様と御息女二名をお連れ致しました」

 案内の兵が声をかけると、扉が開けられました。なるほど、自分達で勝手に開け閉めしてはいけないのですね。

「陛下。ディーン・フロイド・マーネイン、求めに応じ参上仕りました」

 お父様の臣下の礼に倣い、私もカーテシーで挨拶します。ですが、若干作法とは違う点がありました。背筋を伸ばして礼をするのは当然ですが、お辞儀の角度が深すぎるのです。これは私が王女だった頃の癖です。覚えてくださっているでしょうか?

「マーネイン伯爵家長女、ディアンサ・クロード・マーネインでございます。国王陛下へのお目通りが叶い、光栄でございます」

 極めつけは、独特のイントネーションです。国王の『こ』を強調する言い方は、カミーラ・フィレンサの特徴的な癖だったのです。更に言えば、カーテシーからのこの呼び方は、父上へお願い事をする際の決まりでもありました。これを知るのは国中探してもカミーラ・フィレンサと国王陛下の二人だけです。

「まさか・・・。いや、そんな筈は・・・。だが、しかし・・・」

 国王の呟きが、ほんの僅かに聞こえました。皆さんがいる前では大きく揺らぎませんか、流石は国王陛下です。

「良くぞ参ったな、マーネイン伯爵。先だっての騒動、見事な鎮圧であった。王太子の視察巡業も近付いていた故、あのままではどうなっていたか・・・。別室に褒賞を用意させている、受け取ってくるとよい」

 兵士に先導されて、お父様が出て行きました。ああ、体の良い人払いですね、分かります。

「ディアンサ・マーネインだったか。今一度、顔をよく見せてくれぬか?」

 下を向きっ放しだった私の手を、近付いてきた国王陛下が取りました。これだけは予想外でしたねー。

「すまぬが、王妃と王女らをここへ。全員が揃ったら兵は下がってよいぞ」

 あらら、護衛の兵まで下がらせてしまいました。というか、お姉様方も呼ぶのでしょうか?あまり秘密を知る人は多くない方が好ましいのですが・・・。


 王妃様と王女様方が揃い、謁見の間には私と国王一家だけとなりました。ある意味では、私も国王一家なんですけどね?

「王妃様、王女様まで。お初にお目にかかります、マーネイン伯爵家長女、ディアンサ・クロード・マーネインと申します。お見知り置きくだされば幸いです」

 再度、カーテシーで挨拶を。細かい癖も含み全て、カミーラ時代を再現してみました。十年も経つ今、覚えてくださっているでしょうか?あらら、王妃様が泣き出してしまいました。

「ごめんなさい、余りにもカミーラに似ていて・・・。何故貴女が同じ癖を持っているの?」

 王妃様が尋ねてくる間、王女様二人に抱き締められていました。この感じ、とても懐かしいです・・・。

「抱き心地がカミーラと同じよ?それに私の髪を触る手つきが、あの子そのままだわ・・・」

 当然です、本人ですから!

「先刻の挨拶から思っていたが・・・。カミーラ、なのか?」

 国王陛下からの問いかけに、頷いて答えました。それに対して、王妃様も王女様も悲鳴に近い歓喜の声を上げています。はしたないですよ?

「お察しの通り、私はカミーラ・フィン・フィレンサの記憶と知識を持って、この世に生を受けております。では、同一人物なのかと問われても、明確な返答は出来かねますが」

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