企て。・・・お前もか!
ブルータス。・・・クマじゃないよ?
出かけるには護衛が必要ですが、毎回コンラッドやラウールを連れ歩く訳にはいきません。領軍の指揮官であり、教育役ですし。使用人の中には護衛を兼ねられる人もいますが、多分というか間違いなく反対されます。・・・いるではないですか、最適な人が!
「お爺様、お願いがあります。こちらへ来られた時だけでいいので、軍の調練に参加していただけませんか?」
ふふふ、これは名案です。コンラッドが動けないなら、動けるようにしてしまえば良いのです。軍勢としての武勇はブリング男爵、個人としてならばお爺様の武勇伝は国内外問わずに知れ渡っています。生きる伝説とまで呼ばれる人からの調練であれば、使用人───主にセバス───からの反対も出ないでしょう。・・・裏の思惑を知られなければ、ですが。そこはどうにか誤魔化しましょう、全力で。
「ふむ、領軍の顔触れは見たが、確かに練度は低いな。コンラッドといったか、割と有名な傭兵を雇い入れたようじゃが、あれは前線でこそ輝く男じゃしの。うむ、可愛い孫の為じゃ、時間が空けば見に行くとしよう」
お爺様に覚えられているって、どれだけ有名なんですか、コンラッド・・・。少なくともそこらの一兵卒では、顔さえ覚えられていないでしょう。本当に、良い拾い物だったようです。
「大旦那様、それでしたらお嬢様にも、護身術程度は習わせた方が宜しいかと。警備の者がいるとはいえ、いつ何が起きるか分かりませんので」
裏切りましたね、ゼノア!いきなり現れて何を言うかと思えば、『そうして外出する気でしょうが、許しませんよ?』と眼で語ってきます。誰ですか、こいつを育てたのは!私ですか、そうですか。
「そうじゃな、そろそろディアンサにも軽い稽古は必要か。貴族家当主となった以上、危険は何処にでも転がっているわけじゃし」
お爺様もすっかり乗り気です。あーもう、どうしてこうなった!
「とはいえ、いきなり組手という訳にもいかんな。一番は捕えられない事じゃが、そうなった場合に関しての講義といこうか」
護衛がいるとはいえ、何かしらの事情で攫われる事は有り得ますね。一瞬の隙を突かれて、若しくは何らかの騒ぎに乗じて、というのが定石でしょうか?んー、そういう時の事を考えれば、ここで護身術の一つでも習っておく方が良さそうですね。カーミラ時代で考えれば、全く縁の無い事でしたし。
「第一に、相手の戦力を見極める事じゃ。何人いるか、それぞれがどの程度の強さなのか。貴族家の者を攫う以上いきなり殺される事もあるまいし、数日は様子見をされるじゃろう」
どういった相手なのか、観察が重要という事ですね。単なる人攫いなのか、違法奴隷商なのか。はたまた恨みを持つ貴族の雇われか、それを確認するべし、との事です。
次に重要なのは、自分がどういった場所にいるのか。木造の建物か、それとも石造りの部屋なのか。お爺様の経験上、人攫いや違法奴隷商の手合いは木造の小屋で、貴族関連なら地下牢のような場所が多いそうです。・・・地下牢だったら、どうやって逃げるんでしょう?




