変わった物、変わらない物
内部見学の後は、社交の時間です。私が直接招待状を送った方の他にも、招待者の招待で来ている方もいるのです。領民は既に場所を移し、そちらで懇親会という名の食事会をしています。貴族は貴族で、室内に移り食事と歓談に入っています。各自が決まった席に座る訳ではなく、飲み物を片手に会話を楽しんでいます。小腹が空いている人は、適当な所で料理を受け取りに行っていますね。うーん、ちょっと準備する量が多すぎましたか?残ったら領民の方々に配ってしまいましょう。
「お嬢様、マンテス侯爵という方がお見えです。是非ご挨拶したいと」
マンテス侯爵といえば、二つ西側に行った所の領主でしたか?殆ど交流の無い方ですが、ブルムント公爵が呼ぶような方ですし、変な所は無いでしょう。きっと、おそらく・・・。
「お初にお目にかかる、エラルド・マンテスと言う。ディアンサ・マーネイン子爵でよろしいかな?」
「マンテス侯爵様、お初にお目にかかります。ディーン・フロイト・マーネインが長女、ディアンサ・クロード・マーネインと申します。以後お見知り置きくだされば幸いです」
正直に言うと、この方に対しては何も知らないのです。何故かと問われれば、名前すら聞いた覚えが無い程度には。王女時代の記憶を探っても、何も思い当たる節がありませんし。侯爵位の方となれば、噂位は聞いた事があるはずなのですが・・・。
「ああ、そこまで畏まらないでください。初回挨拶は定型通りにさせていただきましたが、これが僕の素なので。それに、僕の家を知らないのも無理はありません。侯爵位だって、ブルムント公爵家のお陰で戴いたようなものですし」
マンテス、マンテス・・・。あ、思い出しました。ブルムント公爵家の遠戚で、元は他国の貴族家だったはずです。その家から留学してきた方がこちらに居着き、両国間の国交樹立で橋渡しをした関係で爵位を与えられたんですっけ?公爵家の縁戚が伯爵位以下では不味いだろうと、外交関係も見据えて侯爵に収まったというお話です。王女としての私が生まれる遥か以前の事で、国王陛下から少し伺っただけなので、すっかり忘れていました。ですが、何故そのような方が直接来られたのでしょう?
「お話というのは他でもなく、この学園の仕組みを我々にも共有させていただけないか、という事です。学業を教えるだけでなく、成績次第で研究活動への参加を可能とする取り組み。そういった機関を考案し、現実のものとする知識と実行力は何よりの宝でしょう」
「身に余るお言葉、大変嬉しく思います。ですが今回の事業は、王妃様と王女様との合同事業となっております。故に、私一人の独断で決められる事ではないのです」
資金の流入こそ無かったものの、幾つか助けをいただいています。未だに私をカミーラとして見ているのか、実の娘として可愛がってくださるのですが。・・・私としての父親はマーネイン伯爵であり、お母様は伯爵夫人です。考えてみたら、いつからでしょう。王女様をお姉様と、心の中でも呼ばなくなったのは?




