建築現場にて。解せぬ。
兎にも角にも、無事にあそ───もとい、巡察旅行へ出る事が出来ました。え、仕事なのに旅行って付くのか?仕事半分遊び半分なので、間違ってはいないのです。その為にこの数週間は更に頑張ったのですから、文句は言わせませんよ?
「それじゃラウール、コンラッド。行きましょうか」
馬車は二台で、一台は道中の着替えや食事専用です。護衛は騎乗で付いてくるので、贅沢に一台丸ごとを荷物用に使えました。予算?そんなのどうとでもなります。領主専用は伊達じゃないのです。まあ、私の個人貯蓄から賄うんですけどね?
「お嬢、着きやしたぜ」
ラウールの台詞は若干盗賊のようですが、元は本職です。コンラッドに壊滅させられた盗賊団でも腕利きの猛者で、その戦いぶりから男として惚れ込み、従者のように後をついて行くようになったのだとか。いきなり屋敷に現れて、庭師達が仕掛けた罠さえ次々と突破し、挙句はコンラッドと大立ち回りです。面白いと思って採用しましたが、良い拾い物でした。
「こら、お嬢様か領主様と呼べ。本当なら屋敷で再教育だったというのに、お嬢様が是非にと言うから連れてきたんだぞ?」
ラウールの口調は何度言っても治らず、本来であればナーザスの調教が待っている所でした。流石にコンラッドだけでは護衛の人手が足りないので、腕と人格を考慮して彼を希望したのです。面白いから好きですよ、この口調?
「ここは屋敷でもないですし、気にしないですよ?それよりラウール。先に建築現場へ行って、そこの責任者を呼んでおいてくれる?着いてすぐ、打ち合わせておきたい事があるの」
溜め息ついでに頭を搔き、コンラッドが折れてくれました。うんうん、これで良いのです。真面目なのも結構ですけど、程良く抜かないと体に心にも悪いですよ?
現場に着くと、責任者らしき人が出迎えてくれました。一人だけ違う恰好なので、多分ですけど。
「ようこそ、領主様。この度は素晴らしい仕事を与えていただき、感謝に堪えません。あちらにお茶を用意しておりますので、進捗に関しては向こうでよろしいでしょうか」
ちょっと慇懃無礼な感じですが、まあ良いでしょう。次回以降、この業者には仕事が行かなくなるだけですし。
・・・何ですか、これは。どの建物も、私が発注した物とは材質も構造も、大きく変わっています。総額は同じで、なのに粗悪な物を使用しているのです。舐めてるんですか、舐めてるんですよね?いいですよ、その喧嘩は買ってさしあげます。草一本生えなくさせますが、覚悟はいいですね?駄目とは言わせませんけれど。
「どれもこれも、お話になりません。私が子供と思い、甘く見てました?材料は三級品で、なのに請求額はこちらに回している見積りの通りになっていますね。そちらの業者では、こういった事を常としているのでしょうか。だとしたら、国王様にきっちりと抗議しなければいけませんね」
何度も説明していますが、私が初代マーネイン子爵であり、当主なのです。教育もかつてブルムント公爵から受けており、この業者が王都にある貴族街を担当していた、と聞いています。担当は違う人でしょうけれど、当時からの蓄積があるだろう、と国王様からも聞いています。なので、安心して任せたのですが。支払額は全て回収、更地に戻させた上で撤収させました。大損?知りませんよ、そんなの。そちらが任命した責任者がやった事です、倒産しようとどうなろうと、私に責任はありません。
調べさせた所、領内の業者以外では大半が似たり寄ったりな事をやらかしてくれていました。変更が効く所は改修させ、手遅れな場所ならば一度解体、再度注文通りに建造し直しです。はあ、どれだけの遅れが発生するやら・・・。あ、勿論ですが、国王様と女王様には伝えてありますよ?業者の拠点は王都のようですし、どんな事になるか楽しみですよね?国王陛下が庇護する貴族に対して喧嘩を売ったのですから、覚悟の上だったのでしょうけれど。




