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やっちゃいました?でも反省しません。

 お父様とセバスは頻繁に、領地経営に関しての会議をしています。爵位を継いでから十数年経ったものの、まだ先代には及ばないと、セバスが考えている為だそうですが。

 ・・・お父様が、遊んでくれません。休日というのに執務室に閉じこもり、セバスとの会議(という名の教育)を続けているからです。

「お父様、偶には遊んで下さい!」

 執務室に入ると、お父様とセバスが向かい合って座り、間の机には過去何年分かの、収支報告書が並べられていました。毎年各領地から送られてくる書類ですが、お父様がこれを広げている姿は見た覚えがありません。・・・何故でしょう?

「ディアンサ様。申し訳ないですが、今職務中でして───」

「ディアンサ、おいで。ちょっと大事な仕事だからすぐには無理だけど、終わったら一緒に遊ぼう」

 お父様の膝に呼ばれ、セバスの横を通り過ぎる。若干苦い顔をしていますが、お父様のお膝には逆らえないのです。

「ちょっと難しい話をするけど、我慢出来るかい?退屈なら、いつでも眠っていいからね」

 退屈?そんな事ありません、寧ろ大好物です!王都で暮らしながらも領地の事が分かるのですし、問題点の発見に繋がる事もありますから。


「お父様、この数字はおかしくないですか?」

 十分も経ったでしょうか、古い物から順番に見ていたら、去年の物におかしな点がありました。小麦をはじめとする農作物の輸出入量が、前の年の物とほぼ同じなのでした。

「確かこの年は近くの領地で飢饉があって、輸出量が増えていたと思います。実際、別の領地では輸出量も項目も増えておりますし。それなのに、三年遡った頃とほぼ変わらない輸入を行った事になっています。変ですよね?」

 その指摘に、お父様もセバスも顔を青ざめていました。もしかして二人とも、気付いていなかったのでしょうか?

「セバス、今のは本当か?」

「はい、事実でございます。私も見落としておりましたが、確かに一つ挟んだ隣のゲイオン男爵領で、小規模の飢饉が発生しておりました。海辺にある領地からですが、そちらから報告が上がっております」

 セバスが広げた報告書に、確かに記載があります。薬品や食品の輸出を増やした事が小さく書かれているだけなので、これでは見落としてしまうかもしれませんね。こういった重要事項は、もっとはっきり書くべきなのですが。

「両方に使者を向かわせろ。アイベルの方は注意だけで良いが、ローゲムへは監査も入れる。その結果次第では、私も出よう」

「お父様、使者と監査は同時に入れるべきです。でなければ、証拠を隠してしまう可能性もありますから。代官として可能な限り地位の高い者、例えば実家が子爵位持ちのレイヘムを派遣する事をお勧めします。あの家は武門の出ですし、そう簡単に言い逃れする事は出来ないと判断するでしょう?」

 実はこの方法、以前にも実行されているのです。お名前は知りませんが、領地で不審な動き有りとされた貴族家に、王城からの査察が入った時の事ですが。

 代官は最初、誰とも知れない文官でした。それが国王の代官を名乗っても信用されず、軽くあしらわれてしまったのです。それで黙る国王ではなく、第二陣の代官には宰相を付けたのでした。王の補佐官、それも国王直々に自身の右腕と評する人が現れては、誤魔化しや賄賂で釣る訳にもいきません。他国への身売りと王族の殺害を企んでいた連中は、纏めて牢獄へ入れられたのだそうです。

「あ、ああ・・・。セバス、すぐにレイヘムとデリックを呼び出せ。二人に臨時代官としての肩書きを与え、ローゲムの監査と査察をさせる。同行させる人選は任せるぞ、屋敷内の者は誰でも構わん」

「畏まりました。すぐに最適な者を選出します」

 一礼してセバスが去ると、お父様が頭を撫でてきました。大きくて暖かい手で撫でられると、とても気持ちいいのです。

「凄いな、ディアンサは。セバスも僕も気付かない事も目が行って、父上でも知らないような事を知ってるなんて。普段の勉強の成果かな?」

「はい、クロードからも色々なお話を聞いています。クロードはもっと凄いんですよ?行った事も聞いた事も無い場所のお話を、いつもしてくれるんです!」

 私付きの侍女達から、色々な勉強を教わっています。お母様付きの執事であるクロードは元王宮勤務で、以前の私も何度か面識があるのでした。お父様と同じような年頃と思いますが、何故辞めてしまったのでしょう?

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