その頃、王都で
遅くなりました、言い訳はしません。アズールレーンなんて知らないよ・・・?
「何、マーネイン子爵領が急激に収益を伸ばしている?」
大臣からの報告に、自分の耳を疑った。以前あそこの代官を任せていた貴族家からは、生産能力の乏しい土地だと聞いていた為だ。周囲は有力貴族に囲まれているものの、特別に際立った産物は無く、一般的な他の領地と変わらない、という報告だった。その代官についての報告がマーネイン子爵から上がってくるのだが、それは別の話だ。
「急ぎ行った街道整備によって、領内外における人の行き来が増加しています。それによって物流が増大傾向にあり、金銭の流入も留まる事を知りません。領主家直轄で作られた宿や物産店、小料理屋も賑わっているようです」
大臣からの報告に、肩の力が抜けた気がした。いや、実際に抜けたのだ。街道整備は国の義務であり、今までは何ら要請も無かった為に見逃していたのだが、各地の街道はかなり酷い有様だったようだ。まともな道は殆ど無く、野山を切り開いただけの粗末な通路があるだけ。報告を聞き、急いで王都中のあらゆる業者や人夫に伝令を走らせ、都合のつく者から応援に向かわせたのだ。国に対しての悪評とならなければ、それが一番だがな・・・。
成人の儀を迎える前に死んでしまった私の娘、カミーラ。病弱故に国民の前に出た事は無く、最期は眠るように息を引き取っていった。それが今、別の名前で、同じ微笑みで我々の国民となっている。二人の姉らは嬉しさのあまり、事ある毎に呼び出そうとしていたが、それは私が止めた。交界への顔出しすらしていない少女を、どのような用件で呼び出せというのか。・・・父親を呼び出したとて、娘が付いてくる訳でもあるまいに。
「でもあなた、私ももう一度ディアンサに会いたくてよ?」
・・・妻よ、お前もか。仕方あるまい、領地の視察と銘打ってでも、一度王女らと共に出掛けるか。私も会いたくないと言えば、それは嘘となるからな。このような気持ちになるのは、妻と出会った頃以来か。
「あなた、ディアンサは元気にやっているかしら?」
家内からの問いに、頷く事で答えた。ディアンサが与えられた領地へ行って既に一年、頻繁にという程ではないが様々な噂は流れてくる。・・・あれならやりかねないな、とセバスと二人で納得してしまったのは言うまでもない。
時折手紙も届いている。こちらに変わった事は無いか、もし何処かの領で飢饉の兆候が見られたら教えてほしい、などという内容ばかりだけど。まあ、元気ならそれで良しとしよう。使用人から領主様が頻繁に外出しており、なかなか戻ってこないという手紙が来てからは、セバスがしばしば捜索という名の強制連行に行くようになった。うちの仕事はどうするんだ。
とまあ、愚痴を言っても仕方ない。叙爵に関しては、私は預かり知らぬ事。対外的にはそうなっているが、夜会へ参加する折に上司から相談も受けている。他言無用とまで言われては、おいそれと話す訳にもいかない。ディアンサが気付いていない事を祈るばかりだけど。まあ、気付いてるよね。次に会う時、何を言われるやら・・・。




