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そして一年、皆元気です

遅くなりました・・・。十年来友人と会いに行ってきたので、その分進捗が・・・

 人口調査をしたところ、一部では住民の移動だけがあったものの、領地全体で見れば増加傾向にありました。領主が変わり、暮らしやすくなったから、という理由らしいのですが・・・。それ程まで、以前は酷かったのでしょうか?

「聞き込みを行った限りですが、国有領だった頃は代官が私腹を肥やす事に終始していたようです。少しでも楽な生活をと綿花栽培をした所、それが思いの外上手く回り、食用作物を作る家が少なくなったのだとか。王都へ窮状を訴えようとしても代官が握り潰し、陛下へ届く事は無かったようです」

 なんとも分かりやすい汚職ですが、それが罷り通っている事に気付かない、というのもどうかと・・・。

「その代官ですが、現在は王都にある屋敷にいるようです。一応は男爵位ですが、特に領地を持たない木っ端貴族ですね。捕らえるなら今のうちと思いますが、如何でしょうか?」

 一年近く私の近くにいた為か、何故調査を命じたかを理解してくれたようです。流石はセバス仕込み、良い仕事をしてくれたものです。

「当然、捕らえます。ですが、それは我々の仕事ではありません。アディム、いるわね?」

 声も上げず音も立てず、部屋の中に入ってきました。アディムは先月雇った使用人なのですが、妙に存在感が薄いというか、気配を感じさせないのです。頭は薄くないですよ?

「王都へは御庭番から数名、それぞれ別の道順で行くよう命じてあります。ですが、そこまでする必要があるでしょうか?」

 確かに、やりすぎかもしれません。ですが、念には念をです。杜撰な証拠隠滅からしても、前領主や周囲の人はあまり周到な計画を練っていたわけではなさそうです。でも万が一、隣接する領主らがそれに加担していたらどうでしょう?中には手紙の検閲をする領地もあるでしょうし、そこで何かが起きたら、という事も有り得ます。そう考えたからこそ、アディム傘下の庭師───別名御庭番───に任せたのです。通常はそのまま庭師として庭園の整備を行いますが、実態は子爵家随一の隠密集団なのですから。人口調査に彼らの育成が間に合っていれば、とちょっと後悔しています。


 人材が乏しく、調査の完了までに一年も要してしまいました。この領地、読み書きの出来る人が数少なかったのです。各地の長であれば問題無く読み書きや計算は出来るものの、若い人となれば識字率は半分以下にまで減少してしまいます。その為に漏れ無く調査を行うには人を送る他なく、集計が終わる頃には季節が一周していたのです。

 それでも、想定以上の成果を得る事が出来ました。何よりこの前領主の汚職、これは陛下をきょうは───もとい、説得するには充分すぎる材料ではないでしょうか。自分で選定し送り込んだ人材による事なのですから、知らぬ存ぜぬで逃げられるわけがありません。

 そういえば、北部のクーリオ侯爵が頭を下げてきましたっけ。領内で製造している魚の燻製がとても良く出来ていて、ウェルリッジ侯爵領でも人気なのだとか。両方を結ぶ街道が無く直接買い付けるには他の領を跨ぐ他に無く、そうすると輸送面での経費がかかりすぎて採算が合わないとかなんとか。

「双方の領を結ぶ街道の建設許可と、関税についての協定書に署名を頼めんだろうか」

 使者ではなく、侯爵本人がやって来ました。言葉こそ平常でしたが、明らかに憔悴しきっています。領民から突き上げられ、しかも馬車に揺られて長距離を移動してきたせいでしょうか?え、ウェルリッジ侯爵領から伸びる道が快適すぎて、何故うちには通らなかったのか、ずっと悩んでいた?・・・自分の胸に聞いてくださいよ、そんなの。工事代金はこちらの負担、でも侯爵領からうちへ来る馬車と商人には通行料を払ってもらう、という事で契約成立です。ちょろすぎますよ、侯爵・・・。

 通行料は直接集金ではなく、検閲の際に人数を記録し、定期的に侯爵家から払い込んでもらう、という方式になりました。他の領地からは取っていない通行税を侯爵領のみから取る、という事を商人や旅人に気付かせない為です。半年程経ちましたが、お陰で領の予算がたっぷりと貯まって来ています。

 何故大量の初期投資が必要となる工事を、うちが全部負担したか?そんなもの、うちの領地と王都の位置関係を考えれば自ずと答えが出ます。・・・実はセバスやナーザスは気付かなくて、ケイトだけが惜しい所まで考えが回っていたんですよね。

 ゼノアやナーザスから腹黒お嬢様と呼ばれる事も増えましたが、領地経営は順調に進んできています。初期方針で打ち出した内容も半分以上は消化し終えましたし、そろそろ次の一手を打つ頃合でしょう。これが成功すれば、もう貧乏領地などと言わせませんよ!

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