放浪開始。夕飯までには帰ります
一月と少し経ち、領内の視察は終わりました。大きく変わった事と言えば、森に近い町では木工業を、海辺では漁だけでなく加工した物の販売を始めさせ、塩田の整備も行うようにした程度でしょうか?そもそも、その程度の事を今まで放置していた事が問題です。間伐さえ行っていなかった森は痩せ、生魚のみを主としていた漁村は寂れかかっていたのですから。
農業については問題無しです。周辺領では作られていない作物を重点的に植え付け、領民が貧困しないように芋類や小麦、嗜好品としての果物までが取り揃えられていましたから。領都から近い分、農作物については目が行き届いたのでしょうか?・・・税収に関わるからですか、そうですか。若干ですが、放棄された畑が多かったので、放棄された畑に麦以外の穀物を植えるよう指示するだけで済みました。
「それじゃ、私は出かけてくるわね。大丈夫、夕飯までには帰るからー!」
そう、領地内の探検です。大まかな指示は出し終え、当面は私が直接指示を出さなくても、領民や領地邸の人達で回せるでしょうし。何人かが苦い顔をしていましたが気のせいですよね、そうでしょう。そういう事にしておきます。
元王族領だったはずなのに、ここの発展はかなり歪な感じです。他領から領都への道は整備されているのに、他の集落や町へ向かう道は野山を切り開き、整地しただけという場所がそこかしこに見受けられるのです。探検とは名ばかりで、実はこういった細かい視察が主な目的なんですよ?いや、本当に・・・。多分、きっと・・・恐らく?
「領主様じゃないですか、一人なんです?」
早速村人の一人に見つかりました。ここで素直に答えたら、屋敷に連こ・・・もとい、一緒に帰りましょうなんて言われるに決まっています。
「ええ、ちょっと気になる所があったので。護衛は村の近隣で待機していますから、ご心配なく。そうだ、ちょっと聞きたいんですけど───」
疑問を挟ませる隙を与えず、質問責めにする。若干卑怯ですが、庶民では思考が追いつかないでしょう。そうしている内に疑問は吹き飛び、私への回答に集中するようになるはずです。まあ、時間が経てば思い出すでしょうが、その頃には私はいないでしょうし。
「ありがとう、とても参考になりました。いつまでにと確約は出来ませんが、皆さんの意見は領地経営に反映させますので、お待ちください」
軽く会釈をし、足早に立ち去ります。さっさと帰らないと、夕飯に間に合いませんからね!万一遅れたら、実家からセバスが来てもおかしくありません。あれに監視される生活なんて、真っ平御免ですよ!
「出掛けるのは構わないんですが・・・。せめて何処に行くか言い残してもらえないと、来客時に説明しようがありませんよ。・・・教育係に、抜き打ちでセバスさんを呼ぶしか無いかなぁ・・・」
ゼノアがそんな事を言っていたそうですが、その時の私は知る由もないのでした───。
使用人の序列は結構難解で、家ごとにも異なる場合があったんだとか。
調べるほどに難しくなったので、ここでは執事イコール使用人の代表格、という形にしています。
家計管理までやっていたんですから、責任も相当ですよね・・・。
こっそり、初めてランキングへのリンクを貼っています。
そのお陰か、アクセス数が今までとは違って伸び早く・・・。ありがとうございます!




