昔噺
結局は私は寂しがり屋なんだろう
いつだって我儘で叶えられなかったそれを渇望していた
「それはみんなそうだよ」
そういう子は私にはあまりにも眩しくて
違うって言えなかった
解る訳無かった
解られたく無かった
それは最近からとかじゃなくて
ずっとずっと前から苦しくて…
気付いてくれるのをずっとずっと待っていた
隠れんぼで、茂みに隠れていた頃から
見つけてくれなくて、わざと大きな音立てて、
「こんな所にいたの」
って驚いて欲しかったあの頃から
みんな、なんも言ってくれなかったな
名前を呼んでくれるのをずっとずっと待っていた
花一匁を歌っていた頃から
誰も私を欲しいって言ってくれなくって
「有朱ちゃんが欲しい!」
そう誰かに言われたかったあの頃から
私が呼ばれないまま
夕焼け小焼けで帰ってく
寂しいのに慣れてから
感情は欠落したかの様だ
みんなで笑うことが出来る
なのに、遠くから小さな女の子がこちらを見ていた
その刹那、人間が解らなくなる
なんで笑うのか
怒るのか
そう思う私には何が足りなかったのか
あの頃、誰かが必ず私の名前を呼んでくれたなら
今とは違う自分がいたのかな?
人生終わるまでの永遠を
誰かと分かち合えたかな?
あの頃私の望みはそういうことだったかな?
時々死に焦がれる私の心は
どんな作用があってこの感情に流れ着いたのだろう
この躰を無性に壊したくなる憤りは
どこから来る?
白いサナトリウム
冷たいタイルの床に座った女の子
緑のワンピースで、落ちた椿を拾っていた女の子
その子が泣きながら私を見ていた
「こんな未来なんて望んでない筈だよ」
解っている
でも、それでも駄目だったんだ
そもそも、この女の子の所為なのでは
ふと思う
この子が我儘なんて思わなければ
相応しい生き方を知っていれば
絶望することなんて一つも無かった…
この心が苦しむ為にない事は解っている
朱く染まった私の手
夢や希望が捨てられた
そんな朱い心の中のサナトリウム
まだ感情は僅かに生きている
廃墟になったサナトリウムの隅で
ボロ雑巾の様に
冷たく無様に横たわっている
もう死んでも構わない
そう思えたなら
苦しみなど知らなかった