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好きなのに理由って必要ですか? と彼女は言った  作者: なつのさんち
好きなのに理由って必要ですか? と私は言ったけれど

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その3

 彼の通う大学と学部が分かった後、すぐに進路指導の面談があった。担任の先生に理工学部について詳しく説明を受けた。理工学部のどの学科を選ぶかによって、学ぶ分野が変わってくるので事細かく説明出来る訳ではないけど、という前置きをした上で、丁寧に説明をしてくれた。


 まず理工学部は就職に強い。特に女性の社会進出の為に管理職として女性を配置する法律があるという理由から、機械メーカーや研究職では女性の採用に力を入れているからだそうだ。

 そして、私の性格から考えて理工学部は非常におすすめの学部だと言われた。実験や研究の多い分野で、物事に没頭して研究出来る人はとても向いているそうだ。

 気になったらとことん追究する。何故そうなるのか調べたいという欲求。数学と物理が得意な私ならば楽しく知識を深めて行けるんじゃないかという事だった。今現在の学力をキープ出来れば、指定校推薦を受けられるだろうというお墨付きまで頂いた。


 そして、進路指導の終わり際に理工学部のパンフレットを渡された。そのパンフレットは、彼の通う大学の物だった。



 自分に合う学部だろうか。自室でパンフレットをパラパラと捲りながら考える。

 その後、塾の担当の先生にも同じように相談をしてみたが、勧められたのは国公立の理工学部だった。君ならもっと上位大学を狙える、学部にこだわりがないなら旧帝大にチャレンジしないか、そのような事を言っていたような気がする。興味がなかったので聞き流してしまった。


 だいたい学部にこだわりがないなら、というのは理不尽な言い方だ。私が学びたい学部がない大学に行って、何になると言うのか。私は理工学部ってどんな学部ですか、と質問しただけだ。それなのにとにかく難関大学へ行けと言う。塾の宣伝にしたいという魂胆が透けて見え、聞く気がなくなった。


 自分の進路は自分で決める。順序が逆になってしまったが、理工学部を卒業した後はどんな仕事に就くのかをイメージしなければならない。とりあえずこういう時には検索をしよう。


 まず出て来た結果は進学。大学院で研究を続けるという選択肢。これはひとまず置いておこう。

 次が研究職。だから何の研究をするの!? そんなに私に研究をさせたいの!!?

 はぁ……、次に品質保証の分析、設計や開発系など色々出て来るけど何だか混乱して来て頭が痛くなって来た。


 彼もこうやって自分の進路を定めていった上であの大学に通っているのだろうか。ふとそんな事を思ってスマホでSNSアプリを立ち上げる。彼の投稿を見ると、何やら不思議な動画が目に入った。

 丸い銀色の球が、壁で仕切られた迷路を進んで行くアニメーション。う~ん、これと理工学部の研究って何か関係あるのだろうか。それとも、サークルで何か制作しているのだろうか。

 これについては改さんもなのちさんも特に返信をしてない。でもいいね欄から2人がいいねを押しているのは分かる。もしかして、とりあえずいいねを押しただけなんだろうか……?


 結局私にとって理工学部への進学が適切なのか、そして彼が投稿した動画が何なのか、どちらもよく分からないままお風呂へと入ってすぐに寝てしまった。




 彼は大学生なので、毎朝同じ時間に電車に乗るとは限らない。そして、私は高校生なので毎日同じ時間に電車に乗る。したがって、毎日彼の顔を見る訳ではない。それだけの事なのだけど、何かがモヤモヤする。彼の事を研究したいから? いやさすがにそれは違うでしょ。


 改めて考えると、私がやっている行為はネットストーカーという迷惑行為なのではないだろうかと思い至る。彼のSNSのIDを盗み見てアカウントを見つけ、フォローする訳でもなく覗き見ている。投稿内容から通う大学と所属するサークルを特定している。昨日は彼が自ら投稿したとは言え、彼の課題の成果らしき物も見てしまった。

 一体私は何故こんな事をしているのだろうか。たまたま気になっただけの彼、執着する理由が見当たらない。

 現状、直接的に彼に被害を与えた訳ではないけど、プライバシーを侵害しているという可能性はある。いや、ない。彼が自ら投稿している内容を読んでいるだけであって、彼のパソコンにハッキングを掛けてデータを盗み出している訳ではないんだから。


 ダメだ、私は冷静じゃない。ぼちぼち進学先の大学を決めなくてはという焦りから来る混乱なのかも知れない。気持ちを切り替えなければ。


「あのっ! いつも同じ車両に乗ってるんですけど、もし良ければ連絡先を……」


「お断りします」


 声を掛けて来たのは近くの共学高校の制服を来た男子。同じ電車に乗っていると言われても私は全く親しみを感じない。見た事もないし。

 断ると同時に駅に着いて良かった。あれ以上何か言われていたら、冷静に対処出来なかったかも知れない。明日から別の車両に乗ろうかなと思うものの、車両を変えてしまえば彼の顔が見れなくなってしまうじゃないかと気付き、さっきの男子が気まずさから変えればいいなと思うに留める。


 だいたい何でわざわざいつも同じ車両に乗ってる、なんて言ったんだろう。知らないし。毎日私は顔を一方的に見られていたんだ。そう思うと少し寒気がした。嫌だ嫌だ、これだから男子は……。


 ん? 何か違和感……、まぁいいや。さっさと学校へ行こう。



次話は明日7時に投稿予約済みです。


合わせて、よろしくお願い致します。

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