その7
知らない天井だ……。うっ、バカな事考えてる場合じゃないくらい頭がクラクラする。起き上がろうにもバランスが取れない。
そうだ、冬花はどうなった!? くそっ、守れなかった……!
「冬花!!」
「ハッ!? しゅ、柊人さん!! 柊人さんしゅうとさんしゅーとさんんんん……」
どうやら俺はベッドに寝かされたらしい。ここは病院か? 俺の胸に縋り付くようにしている冬花の頭を撫でる。
「冬花、何もされてないか? 痛いとこは? 怖い思いさせてゴメンな?」
胸に顔を埋めたまま首を振る冬花。可愛い。超可愛い。背中や肩・腕などを触って確かめる。どうやら怪我はないみたいだ。とりあえずひと安心。これなら冬花のご両親に顔向け出来るな。
「はぁ……、まさか彼女の父親の目の前で身体を弄るような男を連れて来る日が来るとはな……」
えっ!? 誰!? 白衣を来たダンディーなおじ様が目頭を押さえている。
「お父さん! 説明したでしょ、柊人さんは私を守る為に怪我したんだよ!!」
お、お父さん!? ええっ!!?
「冗談だ……」
冗談にしては目頭を押さえたままの冬花のお父上。心無しか肩を震わせておられるような気がする。
「柊人さん、ここうちの病院なの。精密検査の結果、特に問題なかったってお父さんが言ってたんだけど、柊人さんが目を覚ますまで心配で心配で……」
話しながらポロポロと涙を流す冬花。お父さんとか病院とか、色々と説明して欲しい事があるけど、とりあえず今は。
「そっか、心配させちゃってゴメンね。でも冬花が何ともなさそうで良かったよ」
うん、うんと頷く冬花ちゃん。未だに目頭を押さえたままのお父上。お父上はお医者様で、ここはお父上の病院で……?
「あの、冬花ちゃん? あの後どうなったのか教えてもらっていいかな?」
心配そうにしていた冬花ちゃんの顔が、突如むっとした表情に変わる。どした?
「冬花ちゃん?」
「ふ・ゆ・かっ!」
「ふゆ、か……?」
うんっ、と大きく頷く冬花ちゃん。あ、知らない間に呼び捨てにしてたわ。ちゃん付けず呼び捨てで呼べって事か。そう言う事ね。
「はぁ……」
あ、お父上、すみません……。ってか自己紹介もしてねぇわ、今しないとタイミング逃しそうだからやらないと!!
「あ、あの! はじめま」
「あれ~? 柊人君気が付いたの? もうすぐお母様が到着されるって連絡あったよ~」
うわぁ、冬花ちゃ……、冬花のお母上と思わしき女性が。同じく白衣を着ておられる。両親揃ってドクターっすか? ただでさえ彼女のご両親ってだけで緊張すんのにお医者様ってさらに緊張するやつだ!!
「は、はじめま」
「柊人! 大丈夫なの!?」
「これはこれは柊人さんのお母様。初めまして、冬花の母でございます」
「まぁこれはこれはご丁寧に。柊人の母でございます。ごめんなさいねぇ、柊人にお付き合いしている女の子がいるなんて思ってもみなかったものですから」
「いえいえこちらも、まさかうちのコが彼氏を連れて帰ってくるなんてびっくりしました! それも意識ない状態だったものですから余計にびっくり!! あ、こちらうちの主人です。柊人さんの詳しいご容態は主人から説明させて頂きますね」
「あの~」
「冬花の父です。この病院で院長をしております。レントゲン写真などお見せしながらご説明させて頂きますのでこちらへどうぞ」
「はい、よろしくお願い致します。冬花さん、後でゆっくりお話させてね?」
「は、はい! 私は柊人さんに付いていますので」
「「あらあら、まぁまぁ」」
「……、はぁ……」
うわぁぁぁ!! 自己紹介出来ないままみんなが行ってしまったぁぁぁ!!!! しかもお父上は明らかに落ち込んだままだしぃぃぃ!!!! な、何とかしないとマズい。お嬢さんの事を大切に思っていると伝えないと!!
「あ、あの、お父さんっ!!」
「はぁ~……、君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ」
やっちまったぁぁぁ!!!!!!
「気にしなくていいよ、そんな事より……」
皆が診察室へと向かい、寝かされていた病室は俺と冬花の2人きりとなった。お父さんに対する憮然とした表情から、とても申し訳なさそうな表情へと変わる冬花の顔。またも零れそうな涙を蓄えた両目で見つめて来る。冬花が謝る事なんて何もないのに。
口を開いては閉じ、視線を部屋のあちこちに飛ばしつつもまた口を開き、手を揉んで眉間に皺を寄せ、そしてまた口を閉じて。そんな落ち着きのない冬花の言葉を聞くべく、俺は黙ったまま冬花を見守る。言いにくい事と言えば、心当たりは1つくらいしかない。
「本当にごめんなさい、私は柊人さんの彼女には相応しくない。今回の件で、改めてそう思いました」
あなたには相応しくない。俺の彼女はそう言って、涙を零した。
次話投稿は、7月19日木曜日、朝8時の予定です。
よろしくお願い致します。




