その2
「好きです、付き合って下さい」
落ち着こう、彼女の目的が何なのか考えよう。
まず考えられるのが、俺をからかう為に誰かが仕向けた刺客である可能性。これが一番高い。俺がこんなに可愛い高校生に告白される事によりテンパるか、それともテンションアゲアゲになるかのリアクションをどこかで隠れて見ている奴がいるんじゃないだろうか。
「好きです、付き合って下さい」
その次、金目的。俺が毎日電車の中でスマホでゲームをしているのを見ていたのだろう。スマホゲームをしているイコル、オタク。短絡的思考ではなるけどオタクなら金持ってんじゃね? 的な。もしくはオタクだから萌える仕草の1つや2つしてやるだけで貢いで来んじゃね? 的な。そんな感じ。
「好きです、付き合って下さい」
その次、単純に俺をからかうのが目的。誰に頼まれた訳でもなく俺をからかおうと思った愉快犯の可能性。でもこの可能性は低いかな。SNSでの煽り行為や粘着行為であれば匿名でやり取りが出来るが、現実でやるとなると自分の顔や学校名などを晒す行為になる。いくらなんでも自分の私生活を賭けて俺をからかってやろうなんて酔狂な女子高生はいないだろう。こんな可愛い子なら特に。
「好きです、付き合って下さい」
その次……。
「おい、いい加減何とか答えてあげなよ。女の子が困ってるじゃないか」
思考の海に浸っていたら、隣のサラリーマンが俺の肩を突いて来た。そうか、あまりの事で現実逃避していたんだな、俺。
「す、すみません。その、と、突然の事で、つい……」
はぁ、オッサンと会話するだけでこんなに噛んでしまうのに、こんなに可愛い女子高生に突然告白されてスマートに返事が出来る訳ないじゃないか! いい加減にしろ!!
「好きです、付き合って……」
「わー! 分かった、分かりましたから、もう大丈夫です。とりあえず、その、みんな見てるので……」
サラリーマンのオッサンとリクスーお姉さんだけでなく、近くの乗客が興味津々な感じでヲチしているのに、我関せずな感じで女の子は俺への告白を続けて来た。すごいマイペース。言い方を変えれば空気が読めない。だって空気が読める子ならば電車内でイヤホンしてる人に突然告白する訳がない。
「連絡先を交換してもいいですか?」
そう言って彼女はスマホを取り出す。え、どうやるんだっけ? ふるふる? QRコード? もちろん連絡先交換はやった事があるけど(相手は男友達、学校の)突然言われると慌てててやり方が分からなくなるものだ。
慌てる俺を気にする様子もなく「コレをこっちにやって、この画面ですね」と丁寧に教えてくれる彼女。
無事連絡先を交換する事が出来た。え、無事に連絡先交換が終わっちゃったよ!?
「柊人さんていう名前なんですね、ふふっ」
あ、ただでさえ可愛いのに笑うととんでもなく可愛い。やべぇ、こんな子に好きなんて言われてお断り出来る奴いんのかよ。断る理由がねぇ。
っとちょっと待て、俺の名前すら知らずに告白して来たの? この子大丈夫……? そして俺、大丈夫……?
自分のスマホに目をやると、彼女の連絡先情報が表示されていた。この名前は、冬花?
「私と柊人さん、2人とも名前に冬が入ってますね、これって運命なのかな」
ちょっ! 止めて、心臓に鋭く来るの止めて! キン寄りのキュン止めて、死んでしまいます……。
眼鏡の奥の瞳が本当に嬉しそうで、そんな彼女を見ているだけで幸せな気持ちになって、あぁ……。このまま死ねたらなぁ……。
「柊人さん、私が降りる駅に着いたので、今日はお先に失礼しますね。また後で連絡、させてもらいます」
胸の前で小さく手を振りながら、冬花ちゃんは電車から降りて行ってしまった。可愛い、冬花ちゃんマジ可愛い……。
走り出した車内でぼーっと流れゆく景色を眺めている途中で、俺が降りるべき駅をとっくに通り過ぎている事にやっと気付いた。
気付いて慌てて止まった駅で降りたら、車内の乗客達が俺の顔をまじまじ見ているのを感じた。明日からどんな顔して電車乗ればいいんだ!? 1・2本乗る電車をズラせばいいか。
そんな事を考えながら、向かい側の電車を待っているとさっそくスマホが通知を知らせる。
『突然の告白すみませんでした。ところで、降りる駅過ぎてましたけど大丈夫でした?』
知ってたなら教えてよ!!
ん? ってか何で知ってんだよ!!
あ~~~! ツッコミどころがどこなのかよく分からない件!!
次話は明日7時に投稿予約済みです。
合わせてよろしくお願い致します。




