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彼女は僕に、小説家になろうと言った。  作者: 宮野遥
第1章 あなたのファンになりました
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第5話 世界中にスマイルを(願望)

「何を書くかを決める、とはいえ、あなたの作品なのだから、私にできることはジャンル決めなどの相談ぐらい。本格的に上を狙っていくというのなら他にも助言できることはあると思うけれど、今回はそういう訳ではないものね」


「そうだね。とりあえず、僕の文章力とかを見るためだけのものだし」


「ええ。だけれど、もちろんお試しだからと言って手を抜くことは許さないわよ」


「わかってるよ」


 わかってるから、その-273℃くらいの視線をこちらに向けるの、やめてもらえませんか?


 彩風さんは1秒くらい僕を見つめてから、コホンと咳払いをして話を続けた。


「それでは、まず最初にだけれど、書く小説を連載にするか短編にするかを決めましょう」


「彩風さんはどっちの方が良いと思う?」


「私は短編小説の方が適していると思っているわ。最初からいきなり連載していくのも精神的に辛いでしょうから。私も初めて書いた作品は短編だったのよ」


「そっか。じゃあ、短編にしよう」


 そう、と彩風さんは呟きながら頷いた。


「では、次はジャンルかしらね。白石君、何か希望はあるかしら?」


「うーん、そうだね。短編で異世界モノを書くっていうのも難しそうだし、どうしようかなぁ」


 僕はしばらく考え込むけど、これといった答えが出ない。


 彩風さんはそんな僕を数分見つめていたが、急にパンッと手を叩いた。


「こればかりは白石君が自分で考えないといけないことだから、私がいてもあまり意味はないわね。家に帰って考えなさい」


「……わかった。今日はありがとう」


「大したことはしていないわ。では、また明日」


「うん、また明日」




◇◇◇◇




 とりあえず自宅のパソコンで色々書いてるんだけど……。


 あまりいいアイデアが浮かばないなぁ。短編っていうのが意外と難しい。


 よくある異世界転生系とかなら、簡単にとはいかなくても普通に書けると思うんだけど、それを短編で表現するのは相当難しい。というか、僕じゃ無理だ。


 かといって長編にするのもだいぶ厳しい気がするし。


 どうしようか。


 異世界の他に書いてみたいものと言ったら、ラブコメかなぁ。でも、それも短編じゃ難しいよね。


 行き詰まっちゃってる。


 あ、そうだ。彩風さんの処女作はどうだったのか聞いてみよう。参考になるかもしれないしね。


 早速SNSアプリを使っちゃおう。何気に彩風さんと連絡を取るのは初めてだなぁ。




◇◇◇◇




白石凌真@freedom

《彩風さん。ちょっと時間いい?》



相柳ゼロ

《いいけれど、どうかしたのかしら?》



白石凌真@freedom

《彩風さんの最初の作品について聞きたいんだよ。彩風さんも短編を書いたって言ってたよね?》



相柳ゼロ

《そうね。私はローファンタジー系のコメディを書いたわ。正直、今読み返すと、文章が拙すぎて悶えてしまうくらいに酷いのだけれど》



白石凌真@freedom

《へぇ、なんて作品なの?》



相柳ゼロ

《黒歴史だからあまり探らないでほしいって遠回しに言ったつもりなのだけれど、分からなかったのかしら。まあ、どうせ作品一覧を調べられたらすぐにわかってしまうことだし、教えてもいいけれど》



白石凌真@freedom

《お願いします》



相柳ゼロ

《『暇だったので異世界を召喚してみた』という作品よ。本音を言えば、あまり読んで欲しくはないのだけれど》



白石凌真@freedom

《ありがとう。早速読んでみるよ》



相柳ゼロ

《あなた、私の話を聞いていたの……?》




◇◇◇◇




 というわけで、すぐに検索して読んでみた。


 世界の誰もが『異能力』を持っている世界で、主人公が持っている力は異なる世界を召喚するというもの。だけど、召喚候補の世界はみんな微妙なものばかりで……。


 という内容だ。


 普通に結構面白かったし、そんなに卑下することはないと思うんだけどなぁ。


 確かに、今連載中の作品に比べたら荒さが目立つけどね。




◇◇◇◇




白石凌真@freedom

《読んでみたよ。面白かった》



相柳ゼロ

《ほ、本当に読んだのね。あ、よく見たらポイントが増えてる……》



白石凌真@freedom

《うん。しっかりと12点入れさせてもらったよ》



相柳ゼロ

《あんな作品に評価をつけられると、嬉しいことは嬉しいのだけれど、微妙な気分になるわね。それで、白石君。あなたの作品の参考にはなったのかしら?》



白石凌真@freedom

《うーん、そうだね……。楽しませてもらったけど、何かに使えるかって言われると微妙かな》



相柳ゼロ

《本当なんのために私は恥を晒したのよ。いじめ? もしかしていじめなの?》



白石凌真@freedom

《あはは、そこはごめん。……そういえばさ。彩風さんは何で小説を書こうと思ったの?》



相柳ゼロ

《何故そんなことを急に聞いてくるのかしら》



白石凌真@freedom

《なんとなく、かな。前から気になってたし》



相柳ゼロ

《まあ、そこまで不都合があるわけではないからいいけれど》



相柳ゼロ

《なろう作家に憧れの人がいるのよ。辛い時に、その人の作品に元気づけられたの。だから、いつかその人と同じように、誰かを自分の小説で笑顔にできたらいいなと思って……》



相柳ゼロ

《そのために、たくさんの人に読んでもらおうとランキング上位を目指しているのよ》



白石凌真@freedom

《へぇ、そうなんだ。だから日間ランキングに入れた時、あんなに嬉しそうだったんだね。ちなみに、憧れた人って誰?》



相柳ゼロ

《『目納のん』という人よ。累計5位の『人類史上最弱は今日も運命から逃げ続ける』という小説が代表作なのだけれど、知っているかしら?》



白石凌真@freedom

《ごめん、知らない。今度時間がある時に読んでみるよ》



相柳ゼロ

《そう。目納さんの作品は全て面白いから、ぜひ読んでみるといいわ》



白石凌真@freedom

《うん、そうする。彩風さん、僕のために時間を割いてくれてありがとう。もう大丈夫だよ》



相柳ゼロ

《私、結局なんの役にも立たなかった気がするのだけれど》



白石凌真@freedom

《ううん、すごい参考になったよ。じゃあまた明日。学校行く前には投稿しておくよ》



相柳ゼロ

《ええ、また明日……って、明日の朝には書き終わるっていうことかしら。さすがにそれは難しいと思うけれど》



白石凌真@freedom

《大丈夫。そんなに長くはならないはずだから。じゃあね》


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