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1 女オーク エンカウント 女人間

「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!助けてええええ!!!!凌辱されるうううううう!!!!!!!!!!!!!!!!」

 毒草と毒キノコに覆われたソドムの森。オークたちが生きることを許された唯一の場所。そんな、掃き溜めに鶴ならぬオークの森に女人間が腰を抜かして泣き叫んでいる。

この反応、もう飽きた。死にたい。

協定が結ばれて十年がたった今も、オーク差別は根強い。女性のいる職場ではまず雇ってもらえず、大半が糊口をしのぐためにエッチな演劇の男優となるのがほとんどだ。悲しいことに生きるためのこの行動がさらにオーク差別を助長している。オークは未だ犯罪者もしくは犯罪者予備軍扱いされ、このように人間やエルフの女とエンカウントしただけで悲鳴を上げられる。それは普通のオークに申し訳程度のおっぱいがついた女オークの私も同じことだ。

私は悪意がないことを示すために両手を挙げて膝をつき、できるだけ優しい声で言った。

『お嬢さん。私はあなたにエロいこともひどいこともするつもりはありません。どうぞ、ここを立ち去り、こんなオークのことなど忘れて幸福に生きてください』

名もなきオークが考えた、冤罪を免れるための定型文だ。冤罪回避率は今のところ四割を切るが何もしないよりはましだ。

 女人間は木の棒で挑んできた勇者を見た魔王のような怪訝な顔をして私を見た。だがすぐに、

「嘘よ!そんなことを言って油断した私に襲い掛かってさらなる絶望を味あわせるつもりでしょう!エッチな本やエッチな演劇みたいに!エッチな本やエッチな演劇みたいに!」

 二回言った。

『本や演劇はフィクションであり実在の人物、種族、事件などに一切関係ありません』

「信じられますか!」  

さすがは成功率四割。残りの六割強が冤罪により処罰もしくは処刑となる。

仕方がない。ものすごく嫌だが、最後の手段だ。

私は腰布をまくって中身を女人間に見せた。

「いやあああああ!本性を現したわねこのオーク!私はそんな汚い猛ったものをあそこでもここでもそこでもあっちでもどっちでも鎮めるつもりは・・・て、」

私のキノコ一本生えてない大草原をまじまじと見て、女人間は問いかけた。

「あなた、ニューハーフ?」

「女です。正確には女オークです」

「ウソ!女のオークなんて見たことも聞いたこともないわ!」

「はい。通常、オークは雄しか生まれません。しかし、私は突然変異で雌として生まれたそうです」

「そ、そうなの?」

「そうです」

 女人間はまだ疑わしそうに私を、というか私の大草原を凝視していた。

「だから、倫理的にも性癖的もあなたにひどいことをするつもりは微塵も・・・」

 グウウウゥウ

 言い終わるか終らないうちに聞こえたのは失礼、私の腹の虫でなく、まして女人間の腹の虫でもなく、通りすがりのクマだった。

 冬眠から覚めたらしきクマは涎をたらし、見るからにオークより弱くて美味しそうな人間の女に突進した。

 女人間は、当然硬直したまま動かない。見殺しにすれば私を通報する人間はいなくなる。でも、


 グガッ


 せっかく分かり合えそうなんだから、見殺しにするのはそれからでも遅くない。私はクマよりも早く女人間の前に回り込み、噛み殺さんと開けられた口に左拳をねじ込んだ。噛み砕かんと牙が食い込むがあいにく剣も弾くオークの肌には効かない。さらにのど奥に拳を突っ込みひるんだ好きに右拳でクマの脳天をかち割った。

 硬直する前に口から拳をといて引き抜く。今日の朝食はご馳走だ。

「お怪我は?」

「なぜ、私を助けたの?」

 質問に質問で返された。

「えっと・・」

 分かり合えそうだからって言って分かり合えなかったらやだなあ。よし、ここはこう言っとこう。

「クマ肉、私だけじゃ持て余しそうなんで・・」

 女人間は魔王の宮殿の最後の間に行ったらスライムが待ち構えていた勇者みたいな顔をしたが、すぐに

「クマっておいしいの?」

 と興味津々に聞いてきた。


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