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オークの回想

0 オークとは

 

 B.K 1945 人間と怪物の全面戦争、第二次ラグナロク終結。

B.K 1946 人間と怪物の間に和平協定が結ばれ、世界に平和と平等が生まれた。

かのように見えた。


「オークだ!オークが出たぞ!」

「女子供は家に入れ!」

「エロくひどいことをされるぞ!」

 多数の人間と少数の怪物の住む小国アマツカ。この国はかつて恐ろしい狼人間とオークによって略奪の限りを尽くされた結果、美しい自然も、貴重な資源もない貧しい国になった。 

そんな国のさらに偏狭にある村、クーガーはさらに貧しくさびれたところで、優秀な魔術師も、勇敢な勇者もおらず、あるのはただ古い偏見と差別意識だけだった。

「お母さん、オークってなに?」

「坊や、よくお聞き。オークというのはね・・・」

「オーク。人間に近い姿をし、大きさは人間とほぼ同じ、醜く汚しい怪物。知能はあるが鈍く惨めな生物で、極端に繁殖力が強く、人を殺す道具、つるはしややっとこなど、美しくないもの以外は作れるものの他の創造はできず、破壊するだけの存在。要するにエッチな本で女騎士やらお姫様にエロくひどいことをするあの怪物だよ」

「ウイキ・ペーディア賢者!」

「村一物知りの賢者、ウイキ・ペーディアが言うなら間違いない!オークは悪だ!」

「故にこのオークも悪だ!」

 村人たちは年を取っただけの村の賢者の言うことを盾に、小さな子供オークを責め立てた。

「違うよ!えろくひどいことなんてしないよ!食べ物を買いに来ただけだよ!」

「うそを言うな!食べ物を買いに来たと言って人間の女をむさぼりに来たのだろう!」

「そんなことしないよ!それに、私は・・・」

 話し合いをする間もなく、小さなオークは人間たちに殴られ、石を投げられ、金を巻き上げられ、打ち捨てられた。

 哀れなオークは泣きながらオーク居住区、毒虫と毒草の蔓延るソドムの森に帰って行った。

 

「おじいちゃん。どうしてオークってだけで苛められなきゃならないの?」

 小さなオークはお使いを頼んだ大人のオークたちにも罵倒され、殴られ晴れ上がった頬を、池でとれた真っ黒な氷で冷やしながら祖父のオークに問いかけた。

「人間にとってのオークはエロく乱暴な怪物だからじゃよ」

 祖父のオークはただでさえ外見が同じでキャラがかぶりやすいオークの中で個性を出すために、老人語を意図的に話していた。

「でも私の周りに人間の女にひどいことをしたオークはいないよ」

「それでもね、偏見があるんじゃよ」

「ヘンケン?なあにそれ?」

「偏見というのはな、相手のことを知ろうとせずに悪者だと思い込むことじゃ。言葉と心があれば、わかりあえるものを放棄する愚かで悲しいことじゃ」

「人間はなんでそんなバカなことをするの?」

「よわいからじゃよ。人間は騎馬も羽も爪も力も持たん。だから、わしら醜い怪物や他の邪魔な人間を悪者、愚か者、害悪という偏見をつけることで他の怪物や人間を味方につけて、いたぶるんじゃ」

「じゃあ、オークがエロくて乱暴な生き物だっていうのは人間のついた嘘なの?」

「そうじゃ」

「そんなのおかしいよ。やってもいない罪をいつまでも責め立てられるなんて!誰も人間の女なんて襲わないし、私なんか絶対に人間の女なんか襲わないよ。だって・・・」

 

「私は、オークで、女の子だもん」

唯一の女オーク、カーリーは悲しげに呟いた。


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